実はタカラ湯が見せてきた世界には、ひっそりと「孤独」の影がある。銭湯をひとつの居場所とし、熊谷をはじめとする客はそこでの会話や交わりを大切にしてきた。佐和子はまさに、寂しさを埋める“居場所”をタカラ湯に求め過ぎてしまったのだろう。

　一方の穂波も、ゆづ葉がストレートに意見をぶつけたことで佐和子が姿を現さなくなったことを密かに気にかけていた。居場所を取り上げてしまったような罪悪感、言い過ぎてしまったのではないかという不安、穂波の心にもほんの少しの影が落ちる。そこで穂波は、取材で訪れた梅の湯を参考に、タカラ湯でも薬湯を始めることを思いつく。佐和子の言っていた「健康に良い湯」をこうして形にすることで、穂波と佐和子のわだかまりは解け、また温かい湯けむりの中、優しい交流が育まれようとしていた。

　銭湯の効能は湯に浸かることで身体が温まるだけではない。万病には効かないが「孤独」には効くものだ。佐和子の言葉は行き過ぎた表現ではあったかもしれないが、決して嘘ではないだろう。佐和子にとっては、健康になれることと同等なくらい寂しさを埋めて豊かな気持ちになれる場所だったのだ。大きな湯船を取り巻く一期一会は、私たちの心の隙間をゆっくりと満たしてくれるのだ。

ひかりTVでは『湯あがりスケッチ』をはじめとして、銭湯・サウナを舞台にしたドラマを多数配信中！

■放送情報
『湯あがりスケッチ』（全8話）
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信
原案：塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本：中川龍太郎
出演：小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト：https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
公式Twitter：https://twitter.com/yuagari_sketch
特集ページ：https://realsound.jp/movie/2022/02/post-960070.html