『カムカムエヴリバディ』は“名前”が重要なテーマに 太陽と月を取り込んだ「大月ひなた」
1925年から始まった三世代の物語は、岡山・大阪・京都と場所を変え、遂に三代目、時代は1980年代に到達した。だからといって、全てが変わってしまったわけでなく、初代と同じく堀部圭亮・宮嶋麻衣によって演じられる「あかにし」の二代目夫婦、母・清子(松原智恵子)ら赤螺一家を中心とした京都の街の商店街の様子は、ラジオ体操の光景をはじめとして岡山の戦前の商店街の様子が甦るようだ。互いに祖父母より前の代からの交流があると気づかないまま、巡り巡るあんこの味、そしてラジオ。あんなにも反発していた父と同じ台詞・行動を子は繰り返し、それもまた微笑ましい。
るい編は「名前」が重要なキーワードでもある。「宇宙人」表記から始まった錠一郎の役名クレジットは、るいの錠一郎に対する認識の変化に寄り添い続けた。また、市川実日子演じる「ベリー」が京都で「一子」に代わることで、服装、佇まいが大きく変化すること。陽気な桃山団五郎が、二代目桃山剣之介に襲名することで初代と区別がつかないほど完全に成り代わることといった、「名前」が持つ「継承」の意味合いもまた興味深い。そして、錠一郎の名前の中には「定一」の文字があり、定一は彼の中でずっと生き続けている。だとしたら、三代目「大月ひなた」という名前は、「月」と「太陽」両方を取り込んだ、まさに『カムカムエヴリバディ』これまでの物語全てが詰まった名前だと言える。
さて、第71話からひなた役は、新津ちせから川栄李奈へとバトンタッチした。豊かな時代を駆け抜けるように成長したひなたは、頭の中に描いていることと現実がなかなか一致しないもどかしさを抱えた、なんとも不器用で、愛すべき女の子に成長したようである。ひなたと、ひなたを構成するに至った、全ての家族の物語が結実しようとしている。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4:seven:K30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK