『鎌倉殿の13人』大泉洋と西田敏行の抜群のテンポ 市川猿之助も強烈な胡散臭さ放つ

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第3回「挙兵は慎重に」。治承四(1180)年、平清盛(松平健)は後白河法皇(西田敏行)を幽閉し、自分の孫・安徳天皇を即位させた。一方、伊豆北条家では源頼朝(大泉洋)と妻・政子(小池栄子)に大姫(難波ありさ)が誕生し、時政(坂東彌十郎)の妻・りく(宮沢りえ)もみごもるなど平穏な日々だ。

 第3回で印象深かったのは、後白河法皇が夢枕に立ち、頼朝に助けを求めるシーンだ。法皇の子・以仁王(木村昴)は清盛に反旗を翻し、源頼政(品川徹)と計って打倒平家を呼びかけるも、数日で平家に鎮圧された。以仁王の挙兵に加わらなかった頼朝は頼政卿に経を唱えながらも、自分の判断に安堵したのか、その口元はほくそ笑んでいる。そんな頼朝が夜寝ていると、夢に後白河法皇が現れた。

 西田演じる後白河法皇は飄々とした口ぶりで現状を訴える。西田はシリアスからコメディまであらゆる役を見事に演じ切る俳優だ。清盛と蜜月の関係だった第1回で見せた表情は、のちに「日本一の大天狗」と言われる策略家としての一面を垣間見せるものだったが、夢枕に立った彼はどこか親しげだ。長らく顔を会わせていなかった頼朝に「あんた、こんな小さかったんだよ」と、手で示す大きさはあまりにも小さかったが、懐かしそうに語りかける。そして「平家のやつらを都から追い出してくれ」と訴えると「なあ、頼む。なあ、なあ、なあ」と頼朝を激しく揺さぶった。その後、頼朝に「返事は?」と問いかける台詞が脚本通りなのかアドリブなのかは定かではないが、数多くの三谷幸喜作品に出演してきた西田らしいテンポのよさで思わず笑ってしまう。

 SNS上では頼朝を金縛りにする西田の姿に映画『ステキな金縛り』を思い出した人も少なくない。対する大泉の演技もコミカルだ。大泉演じる頼朝は、北条義時(小栗旬)以外にはなかなか本心を打ち明けず、その顔つきは険しいことが多い。だが金縛りに遭った頼朝は全力で驚き、慄き、悲鳴をあげる。「お……お願いだから揺らさないで!」と懇願し、自分の悲鳴で目を覚ます際の表情には滑稽味があった。

 コミカルといえば、時政の表情変化も面白い。子をみごもったりくに「寄らないで」と言われ、「ええ…ひでえなあ、もう」と嘆いたかと思えば、りくに「戦で手柄を挙げてのし上がるのが武士」「いずれ必ず佐殿(頼朝)には立っていただきましょう。その横にはしい様」と焚きつけられ、すり寄られると途端にデレデレした笑顔を見せる。可愛らしくて憎めない。

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