『エル プラネタ』が描く“現実と虚構” 全編モノクロで飾る崖っぷち母娘の現実逃避行

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、締切の崖っぷちに追い込まれている大和田が『エル プラネタ』をプッシュします。

『エル プラネタ』

 ロンドンでの学校生活を終えた駆け出しスタイリストのレオ(アマリア・ウルマン)は、母(アレ・ウルマン)が暮らす生まれ故郷スペインの海辺の田舎町・ヒホンに帰ってくる。しかし、母は破産寸前でアパートも立退を迫られているギリギリの状態。母と娘は、お金も仕事も、そして住む場所までも厳しい崖っぷちに追い込まれながらも、SNS映えするスタイリッシュな暮らしを目指します。身の回りのものをネットで売ったり、ハッタリをきかせてお金を稼ぎ、なんとかその日暮らしの生活を続け、なりふり構わず生きていく、崖っぷち母娘の現実逃避行が全編モノクロで描かれます。

 ネットの回線が弱く、電気も止まってしまい、充電は図書館へ。暖もまともにとれずにくっついて寝る、ライトの代わりにロウソクの灯りで食事を楽しむ……。苦境に置かれているふたりには申し訳ないけれど、そんな姿が少し微笑ましく見えてくる瞬間がありました。そして、いつだって外行きの姿で飾った彼女たちはカッコよく見える。でも、同時に感じる彼女たちの不安定さに胸がうずきます。

 母の万引きが見つかるシーン、娘がお金のために大事なミシンを譲るシーンが、引きのカットで街の風景を映す映像と同化して、自然に挟まれて映し出されます。それは、彼女たちが意識する“SNS映えするスタイリッシュな暮らし”の裏がドキュメンタリー映像のように垣間見える瞬間でした。反対にクロースアップされるのは、彼女たちが空想をして時間を潰している様子。そのシーンの対比が、現実と虚構を過ごしている2人を象徴させます。

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