『劇場版 呪術廻戦 0』に期待したいこと 五条と夏油の因縁はより深く描かれるのか?

 12月24日、アニメ映画『劇場版 呪術廻戦 0』(以下、『0』)が公開される。

 芥見下々が『週刊少年ジャンプ』で連載している『呪術廻戦』(集英社)は、人間の負の感情から生まれる呪い(呪霊)を祓う呪術師たちの活躍を描いたオカルトアクションバトル漫画だ。元々、ジャンプを代表する看板作品だったが、制作会社MAPPAが手掛けたアニメ版の放送によって人気が一気に爆発。アニメとの相乗効果でコミックスの売り上げも激増しており、テレビアニメが終了した現在もその勢いは止まるところを知らない。

 今回の『0』は『呪術廻戦』の前日譚で、コミックでは「0巻」と呼ばれる『東京都立呪術高等専門学校』が原作となっている。だから本編を知らなくても問題はない。むしろ入口として最適なので新規ファンがさらに増えるのではないかと思う。

 0巻の主人公は16歳の少年・乙骨優太。呪霊化した幼なじみの少女・祈本里香に取り憑かれている乙骨は、東京都立呪術高等専門学校(以下、呪術高専)に編入し、里香の呪いを解く方法を学ぼうとする。一方、時を同じくして百を超える一般人を呪殺し呪術高専を追放された最悪の呪詛師・夏油傑が動き出す。

 物語の中心となるのは乙骨と里香のピュアでダークなラブストーリーで、劇中では里香の歪んだ愛は「呪い」として描いている。本作における「呪い」は、異能力バトルを描くための設定だが、同時に「学校のイジメ」のような人間の負の感情が生み出す悲劇のことも「呪い」として表現されている。

 ネット時代になって「呪い」という言葉には妙な説得力が生まれつつある。SNSで流れる無責任な噂話や誹謗中傷が様々な事件の発信源となっている状況を見ていると、現代は「呪い」の時代なのだなと実感する。そんな時代の気分を捉えているからこそ『呪術廻戦』は現代的な作品となっているのだが、果たして本当に愛は“呪い”なのだろうか? このテーマが気になる方なら『0』を楽しめるのではないかと思う。

 一方、すでに原作漫画とアニメにハマっている筆者のようなファンが期待しているのが、五条悟を筆頭とする『呪術廻戦』にも登場するキャラクターたちの活躍だ。

 0巻は全4話のエピソードを一冊にまとめていることもあってか、話が駆け足で、乙骨と里香のエピソード以外はだいぶ省略されている。特にもったいないと感じたのが五条と夏油の見せ方。

 0巻を描いた時点では『呪術廻戦』の構想はまだ存在せず、後にコミックスで描かれた五条と夏油の因縁が、作者の中でどれだけ固まっていたのかはわからないが、すでに二人の過去編が書かれている今なら、原作漫画を踏まえた上で二人の物語をもっと描いてくれるのではないかと期待している。

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