『カムカムエヴリバディ』安子の心を推進させたクリスマス 史実ではどうだった?

 そこから1900年初頭には、どんどんクリスマスが一般化していく。1912年に歌人・木下利玄が残した歌に「明治屋のクリスマス飾り灯ともりて煌きらびやかなり粉雪降り出づ」というものがあったことから、すでにイルミネーションも存在していたことがわかる。なにより、1926年の12月25日にその日を大正天皇祭、つまり祝日と定められたことから日本ではさらにクリスマスの習慣が根付いていったという。25日が休日だったのは、1927年から1947年にかけてのことである。クリスマス自体は1940年から禁止されていたが、大正天皇に因んだ祝日であったため25日は戦時中もお休みだったわけだ。当時、るい(中野翠咲)の年頃の子供は「なぜ今年はクリスマスがないの?」と親に聞いたのだろうか。そして親は、安子のように、その答えに困ったのだろうか。ドラマの中で、米軍兵がサンタの役回りで近所の子供達にお菓子を配っていたが、実際にそういった写真も残っている。

 クリスマスは、その後ベビーブームなどの背景を踏まえ、デパートなどの“商戦”に姿を少しずつ変えていく。そして現代は言わずもがな(それもそれでどうなんだ)クリスマスは、“恋人たちのクリスマス”になった。もちろん家族で過ごす方も少なくはないと思うが、欧米に比べるとやはり家族というより、恋人と祝う日のようになっている。これも商戦が関わっているのだろうけど、変わらないコンセプトは「大切な人と過ごす」ことだ。それを考えると、やはり恋人であり家族である稔と過ごせなかった安子の切なさを痛感してしまう。

 しかし、クリスマスの日に彼女の元に“サンタ”がやってきた。まさかそこで名前の意味を回収するとは思わなかったが、ようやく帰ってきた兄・算太と娘のるいとクリスマスを過ごすことができた安子。雉真家との確執のようなものは依然としてあるし、女中の雪衣(岡田結実)の不穏な距離感も見過ごせないが、それでも彼女にとって久々の吉報であったことに違いはない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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