『日本沈没』小栗旬演じる天海の言葉が現代に響く 現実とフィクションの絶妙な距離感
『日本沈没-希望のひと-』では、日本沈没を信じる側と否定する側の対立が一貫して描かれてきた。一方の側には天海や田所、椎名(杏)がいて、もう一方の側には副総理の里城(石橋蓮司)やかつての世良、企業トップたちがいる。双方の主張を比較すると、前者が想定に基づいているのに対して、否定する側の言い分は現実的でいかにももっともらしく響く。日本沈没自体が架空の設定であることもあるが、それは本作の本質が想像力と現実の対立を描く点にあることを示している。
ときに現実は想像力の壁になる。現実や常識が災害時の対応の遅れや被害の拡大を招いてしまう事例は多くある。災害が災害であるのはそれが想定外の不確実性を伴うからで、だからこそ未知の危険を想定することが被害を最小限にとどめることにつながる。現実世界を舞台にした作品は、地震や海面上昇など起こり得る災害に対して警鐘を鳴らす意味を持つ。その反面、あくまでフィクションであり、安心して観ることのできる距離感も重要だ。本作が多くの視聴者を引き付けているのはその距離感が絶妙だからだろう。
国土の沈没は国の斜陽を意味し、大企業の海外移転をめぐる駆け引きは日本を支えてきた企業の経営権が外資にわたる現状とも重なり合う。グローバル企業の移転をめぐる米中の綱引きは国際政治を戯画化していた。なによりも「どん底を這いあがってきた日本人だからこそ、きっとまた未来を築けるはず」という天海の言葉に、原作が書かれた48年前と先行き不透明な現代が二重写しになって見えた。
■放送情報
日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、高橋努、浜田学、河井青葉、六角慎司、山岸門人、竹井亮介、高野ゆらこ、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、小林隆、伊集院光、風吹ジュン、比嘉愛未、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之
ナレーション:ホラン千秋
原作:小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志
プロデュース:東仲恵吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/nihon_chinbotsu_tbs/
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