村上虹郎、『カムカム』で放つ絶大なる安心感 “勇ちゃん”が報われる未来は?

 連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で、ヒロイン・安子(上白石萌音)の幸せを想って奔走する存在として、幼なじみであり義弟にあたる雉真勇(村上虹郎)の献身的な姿が描かれている。

 幼い頃からずっと秘かに恋心を寄せていた同級生の安子と兄・稔(松村北斗)の結婚に反対する父・千吉(段田安則)を説得するために、「家のための結婚はわしがするから」と自ら訴える。これまでは雉真繊維の跡取りとして一身に周囲からの期待を背負う長男・稔が当然のごとく務めてきた役割を、次男である勇がここぞという時に代わりに自分が引き受けると名乗り出たのだ。

 さらに、「父さんはどねん思よるん。父さんの工場で作る軍服を着て、兄さんが戦争に行くことをどねえ感じとるん」という勇のあまりに真っ直ぐで真摯な問いかけに、千吉は自分の本音から目を背け切れなくなったのではないだろうか。

 親の決めた相手との縁談が進み自暴自棄になりつつある稔に対しても、発破をかけようと、あるいは稔に本心を思い起こさせるために一肌も二肌も脱ぐ。「あんこ(安子)のこと傷つけたりせんて信じとったのに。兄さんだから諦めたんじゃ」と胸ぐらを掴み、飛びかかる勇の姿には、安子のことはもちろん尊敬する自慢の兄・稔へのそこはかとない愛情、2人の幸せを心の底から願う強い想いが滲み出ていた。それと同様に、“自分じゃダメだ、到底敵わない”と自分に常に突きつけてくる完璧な兄という“大きな壁”に改めてぶつかり、その中で自分が出来る役回りを手探りで必死に掴もうとしているようにも見えた。

 勇役を好演している村上は本作が朝ドラ初出演だ。ミステリアスでアーティスティックな独特な空気感を纏い、隠しきれないお洒落さが立ち昇る掴みどころのない村上だが、全くお芝居の上では彼特有の雰囲気、世界観が邪魔にならない。それどころか、異質な温度感をもってしてもどんな世界観にもスッと溶け込み馴染めるのが彼の魅力と言えるだろう。特にここのところ、あどけなさが残る純朴で健気な役どころが続いているようにも思える。大胆さと小心者な部分、ドライさとウエットさなど相反する部分を絶妙な配分で役柄の中に共存させ見せてくれる。

 『カムカムエヴリバディ』の勇役でも、本人の色気や独特な抜け感は一切封印し、飄々としていながらも、その中で少し不器用なまでのひたむきさや安心感を滲ませる。勇だけは絶対に安子を裏切らないという信頼感が凄まじい。

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