新井順子Pが『最愛』で叶える“見たい”こと “視聴者の考察”採用の可能性も?

 10月15日よりスタートした金曜ドラマ『最愛』(TBS系)。現在の殺人事件と15年前の失踪事件が交差する緊張感あふれるサスペンスラブストーリーで、初回オンエアからさっそく視聴者の心を鷲掴みにしている。

 本作は『MIU404』『わたし、定時で帰ります。』『アンナチュラル』など、次々とTBSの話題作を生み出してきた新井順子プロデューサー待望の新作という点でも、ドラマファンから注目されていた作品だ。

 主人公の真田梨央を演じるのは吉高由里子。そして梨央の初恋の人で刑事の宮崎大輝を松下洸平が、さらに梨央の会社の弁護士・加瀬賢一郎を井浦新が演じる。主要キャストも新井プロデューサーと過去に名作を生み出した顔ぶれとあって、さらにその期待を高めている印象だ。

 オリジナルストーリーで紡がれる本作が、どのようにして生まれたのか。このドラマで見たかったというキャストたちの新しい顔、そして新井プロデューサーならではの細部までに散りばめられたこだわりについて聞いた。

始まりは、“吉高由里子さんでサスペンスが見たい“という思いから

――『最愛』の企画はどのようにスタートしたのでしょうか?

新井順子プロデューサー(以下、新井P):以前、『わたし、定時で帰ります。』を手掛けていたとき、吉高由里子さん演じる東山結衣が、過労で倒れた婚約者の種田晃太郎(向井理)に寄り添うシーンがあったんです。そのときの緊迫した表情を見て、吉高さんでサスペンスをやったら面白いだろうな、見てみたいなというのが始まりでした。ストーリーとしては、初恋の人と再会したときに「容疑者」と「刑事」だったらイヤだなというのが最初に思い浮かびまして。殺人がなぜ起きていくのか、失踪がなぜ起きたのかを推理しやすい感じに作っていったので、相関図がややこしいことに(笑)。でも、何でも説明するのはやめようと思っているんです。考えながら見られるドラマじゃないと想像をかき立てられないというのがあるので。なるべく説明を省いてやっていこうと思っています。

――『最愛』も『わたし、定時で帰ります。』と同じ奥寺佐渡子さん、清水友佳子さんが担当されますね。

新井P:これまでも『リバース』や『Nのために』など湊かなえさん作品を原作にしたサスペンスを手掛けていただいたチームなので信頼感しかないですね。今回は「湊さんに頼らず自分たちでオリジナルやるぞ」と(笑)。ややこしい相関図とプロットから、まるで小説のような台本が出来上がるので、ありがたいです。原作ものとは違いキャラクターの名前もイチから考えることができるので、個人的には姓名判断しまくりました。「これ、私のベスト3」という候補を脚本家さんに送ったりして、気分は名付け親でしたね(笑)。

――そんなところからこだわりがつまっていたとは! その希望が叶った、第1話の吉高さんの演技をご覧になっていかがでしたか?

新井P:「天才なのか?」と唸らされたシーンが随所にありました。なかでも、血だらけの服を見つけて1人でこっそり燃やすシーンがあったと思うのですが、その表情がすごかったです。何がすごいかって、そのシーンを撮影する直前までいつもの吉高さんなんですよ。「ぎゃははは」と笑っていたのに、「ヨーイ、はい!」で涙ストーンって流れて。どうしたらそうなるんだろうと。きっと「こうしよう」という感じじゃないんでしょうね。とある言葉に眉毛だけピクって動く反応してしまうみたいな場面もあって、反射的な演技が本当にうまいなと感動しました。

――松下洸平さんも『MIU404』で新たな一面が開拓された印象がありました。

新井P:松下さんはこれまで好青年の役が多かった印象なので、そうではない部分を見てみたいという気持ちがありました。『最愛』の大輝では、より無骨なタイプの男性を演じていただきたいとリクエストしています。松下さん自身はスポーツがそんなに得意ではないとおっしゃっていたんですが、陸上シーンのためにかなり走り込んでくれて。日にも焼けてフォームも崩れることなく撮影することができたので、さすがだなと。第1話では、梨央の父を演じた光石研さんと車の中で話すシーンがありましたが、そこでの松下さんは“婿にしたいナンバーワン“の表情をしていて素敵でした。台本上ではサラッとしたシーンなのですが、松下さんが演じると実に生々しいというか日常的なシーンになっていて、すごくいいなと思いました。

――井浦新さんについては、どんなリクエストをしたのでしょうか?

新井P:『アンナチュラル』で井浦さんが演じた中堂さんは、ちょっと偏屈なキャラクターだったので、加瀬さんの役は癒やし系でお願いしています。仕事はビシッとやるんですが、梨央の前では解けちゃう感じというか。癒やされるように(笑)。現場でも女性スタッフから人気で。第1話では出番がすごく少なかったと思うんですが、徐々に「梨央のことどう思ってるわけ?」「でも、社長に対して言えないよね、好きなんて!」みたいなツッコミを入れたくなると思います。話が進むにつれて「大輝派」か「加瀬派」かどちらが多くなるのかも、個人的には楽しみにしています。

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