出演作3週連続公開は単なる偶然ではない!? 劇場でわかる「いま、奈緒がアツい理由」
9月10日より公開の『先生、私の隣に座っていただけませんか?』にはじまり、『君は永遠にそいつらより若い』『マイ・ダディ』と、出演作が立て続けに公開されている俳優・奈緒。3週連続で、彼女の出演作が封切られたのだ。これは偶然なのだろうか? そしてなぜ、彼女はここまで必要とされるのだろうか? それぞれの作品で奈緒が見せる表情は当然ながらまったくの別モノ。すべての作品に連続して触れることで、演じ手としての彼女の真の力に触れることができるだろう。
それぞれの作品において奈緒が演じる役や、その役どころについて見ていきたい。まずは『先生、私の隣に座っていただけませんか?』から。本作で奈緒が演じているのは、漫画家である妻・佐和子(黒木華)に隠れて不貞をはたらいている夫・俊夫(柄本佑)の不倫相手・千佳。なんとこの人物、佐和子の担当編集者なのだ。身近なところでの不貞。俊夫も俊夫だが、この千佳もなかなかに大胆不敵な人物であることが分かるだろう。好奇心旺盛で、内心、何を考えているのか分からない。不安や焦りなどとは無縁のようで、恐らく不倫がバレているであろう状況を楽しんでいるようなフシがある。ここで奈緒が終始浮かべる不敵な笑みが印象的。声も常に弾んでいる。とくに俊夫に向ける笑みは愛情から生まれたものではなく、どこか弄んでいるもののように見える。なかなかの危険人物だ。
打って変わって、『君は永遠にそいつらより若い』での奈緒はまるで別人だ。演じているキャラクターが違うのだから当然のことではあるが、それにしても、である。本作は、大学卒業を間近に控える主人公・ホリガイ(佐久間由衣)の日々を綴ったもの。彼女が交流するさまざまな人々のなかでも、特別な関係を築くのがイノギという人物だ。このイノギを演じているのが奈緒。好奇心旺盛な千佳とは大きく異なり、ポツポツとした語りや、水面が静かに揺れるような控えめな笑顔が深く印象に残る。イノギには、過去に痛ましい経験をしているという設定があるのだが、それを語らずとも、奈緒の挙動の細やかさやセリフごとの発声の変化は、観客にそっと訴えかけてくるのだ。
続いて公開されたのが、ムロツヨシ初主演作『マイ・ダディ』。本作は、男手一つで育ててきた愛娘が難病に冒されてしまい、彼女の命を守るために父が奔走するさまを描いた作品である。奈緒が演じているのは、一男(ムロツヨシ)の妻であり、ひかり(中田乃愛)の母である江津子。それも、“8年前に他界してしまった”という設定だ。映画は現在パートと過去パートが交差するかたちで展開していくため、奈緒が登場するのは過去パートの方。先述した二作とはまた異なり、こちらでは優しい母親の顔を見せている。ところが、夫と娘に対して彼女はある葛藤を抱えており、それがときおり表情に滲み、広がる。それはあまりに悲痛なもので、観ていて耐え難い気持ちになった方も多いのではないかと思う。