エミー賞席巻『ザ・クラウン』の真価とは 未だ根強いダイアナ人気が話題に一役買った?

 また本作のような硬派な人間ドラマには演技巧者が欠かせず、ウィンスレットとコンビを組む若手刑事役エヴァン・ピーターズ、そしてドラマ終盤に大きな見せ場が用意されたジュリアンヌ・ニコルソンが共に助演賞に輝いた。ピーターズは『POSE』に続いて白人中産階級の屈折を演じ、性格俳優ぶりを発揮(MCUに合流している場合ではない)。ニコルソンは昨年の『アウトサイダー』でも好サポートを見せており、彼女のような役者を評価できてこそアワードの意味がある。

エヴァン・ピーターズ
ジュリアンヌ・ニコルソン

 主演男優賞はNetflix『ホルストン』で実在のファッションデザイナーを颯爽と演じたユアン・マクレガーに輝いた。ウィンスレットと同じく90年代に英国から現れた彼も今やベテランの域。キャリアの主戦場はTVにあり、当たり役であるオビワン・ケノービを再演するスターウォーズ最新作もTVシリーズだ。ハリウッドスターや映画監督が上質の人間ドラマを求めてリミテッドシリーズを手掛けるトレンドは今後もさらに加速していくだろう。

ユアン・マクレガー

 最後に。今年、日本ではU-NEXTが授賞式をライブ配信し、例年よりも盛り上がったように思う。当日に向けてノミネート作品の紹介に余念がなく、海外ドラマファンを取り込むべくHBOと提携したU-NEXTの気概を感じた。後日、授賞式の様子には字幕も付けられており、かなり頑張ったと言えるのではないか。

 一方、スタジオ別で最多受賞となり、悲願の作品賞にも輝いたNetflixJapanのTwitterアカウントは本稿執筆時点で受賞結果に全く触れていない。先立って『ザ・クラウン』のマーガレット・サッチャーを“かっこいい女”ともてはやすなど、どうやら作品も見ていない様子だ。海外ドラマファンは黙っていても盛り上がるかもしれないが、良質な作品を一部マニアだけのものにして良いのか。『クイーンズ・ギャンビット』で作品賞に輝いたプロデューサーのスピーチが印象的だ「アルゴリズムでも大金でもない。ファンの口コミこそが大ヒットを生む」。ただのストリーミングサービスではなく、ポップカルチャーを牽引する存在であってほしいと期待している。

■配信情報
「第73回エミー賞」
U-NEXTにてアーカイブ配信(字幕版)独占配信中
https://video.unext.jp/title/SID0062003
配信形態:見放題
(c)Television Academy.
第73回エミー賞特設ページ: https://www.video.unext.jp/lp/73rd_emmy_award

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