トラウマシーンもいっぱい 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』はグロくてワクワク
えぐい、グロい、気持ち悪いけどグッと掴まれる子供心
『インディ・ジョーンズ』シリーズを一通りみたけど、すっかりそれぞれがどんな内容だったか覚えていない。そんな方にでも、「インディが大きな石から逃げる」と同じくらい、「晩餐に出てきた蛇料理」は強く印象に残っているはず。インディたちを招いたマハラジャは、彼らに料理を振る舞うのだが、その料理が猿の脳みそだったり、巨大蛇の腹を切り裂いて出てくる生のうなぎだったり、白目をむいてしまうようなものばかり(目玉のスープもあるよ)。映画史に残る晩餐シーンでウィリーはヘロヘロになってしまうが、その後も大量の昆虫が蔓延る穴に手を突っ込むことになるとは、夢にも思わなかっただろう。虫も、まあまあサイズが大きくて見ているだけで悲鳴をあげてしまうほどグロテスク。
そして宮殿の地下で行われている邪神カーリーを祭祀する儀式では、生きたままの人間の心臓を抉り出す。グロい。しかも、人々を洗脳させるために悪魔の血を飲ませており、のちにインディもこれを無理矢理口にされるシーンがあって「おえーっ」となってしまう。非常にディスカスティングだ。この一連の儀式シーンは子供に対して強烈な印象を与えるだろう。こういう風に、ファミリー映画でも容赦なく残酷な描写をするというのは、“スピルバーグあるある”。ラストで崖から悪いやつが落ちて死ぬのに、さらにその下の川にいたワニの全身を食いちぎられるというオーバーキルっぷりを映したくらいだ。あと、子供が地下で強制労働をさせられているというのも、なかなかに酷でダークな設定である。
こんな調子で、『魔宮の伝説』はとにかく気持ち悪くて、えぐいシーンが山ほど登場する。しかし、だからこそ画的にインパクトがあって、3部作のどれよりも強い印象を観客に与えているのではないだろうか。あと、なぜか子供の頃は「うげぇ〜っ」という描写であればあるほど、胸が踊ったものだ。あれはなぜなのだろう。
スピルバーグさすが!と唸ってしまうシークエンスの数々
しかし、どれだけ気持ち悪いものがインパクトを与えたとしても、それ以上にやはりスピルバーグが持つ本来の監督力と映像の捉え方の美味さを痛烈せずにはいられない本作。特に、終盤近くのトロッコシーンは現代でも色褪せることなくスリル満点で、その画力と撮影力は圧巻なものだ。本稿の初めに触れた「ローラーコースターアクション」を、文字通り体現するシークエンス。のちのディズニーランドのアトラクションのトロッコも、ここからインスパイアされて作られたのだろう。まさに、見ているだけでアトラクションに乗っているような躍動感とスピード感には、ワクワクせずにいられない。
映画は2時間に収まる長さで、そのなかで観客を一切飽きさせずに王道かつ英雄的なラストで締め括られる『魔宮の伝説』。80年代の映画の良さ、みたいなものが全て凝縮されているような作品だ。確かに、「そんな風にはならないだろう」と理論的には納得いかない描写だってある。でも、エキサイティングでクールだったらそれでいい。色々難しく考えさせられるのではなく、スクリーンで繰り広げられる活劇をただ受け取って楽しむ心地よさ。映画館をただ良い気分で、「楽しかった」と笑顔になりながら出ていく時の、あの感覚をこういった作品は思い出させてくれる。
■放送情報
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』
日本テレビ系にて、9月24日(金)21:00~23:19放送
監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作総指揮:ジョージ・ルーカス、フランク・マーシャル
製作:ロバート・ワッツ
アソシエイト・プロデューサー:キャスリーン・ケネディ
原案:ジョージ・ルーカス
脚本:ウィラード・ハイク、グロリア・カッツ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
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