『#家族募集します』にじやの決断は? 蒼介が抱える2つの家族への葛藤

 たとえ他者に説明するのは難しい形のコミュニティだとしても、彼らのこれまでの歩みを笑顔と涙と共に見つめてきた視聴者としては、離れ離れになってほしくないと願うばかり。振り返れば、それぞれの家の中であったら見えてこなかった多くの問題を、みんなで解決してきたのだ。

 最初の壁は俊平(重岡大毅)と息子の陽(佐藤遙灯)が、みどり(山本美月)の死とどう向き合うかだった。もしあのマンションに住んでいたら、今もあのみどりの机を片付けるきっかけを失っていたかもしれない。そんな俊平が新しい絵本を作り出したことも、にじやで共に向き合ってくれる家族がいてくれたからに違いない。

 完璧主義な礼(木村文乃)は“成り行き任せ”ができるほど柔軟になり、娘の雫(宮崎莉里沙)も礼に何かを与えられるばかりではなく自主的に成長を遂げている。ミュージシャンの卵であるめいく(岸井ゆきの)はシングルマザーだからこそ作れる音楽を目指す覚悟ができた。また、めいくの帰りを1人待つばかりだった息子の大地は銀治のピンチを乗り越えたことによって大きな自信を身につけた。

 もちろん仕事だけの眉間にシワがきざまれるような日々から家族との時間を大切する方法を学んだ黒崎親子もそう。そして誰よりも家族を求めていた蒼介に、みんなのおじいちゃんとなった銀治も……。

 随分とにぎやかになったにじやを、みどりが見たらきっと「笑っているみたい」と表現したのではないか。家はそこに住まう人たちの写し鏡。にじやに客足が戻ってきたのも、きっと家自体が楽しげな雰囲気を放っているからなのだろう。

 考えてみれば、家には子が成長したらやがて旅立つ“巣”のような一面もある。このにじやの家族は、それぞれの問題を解決して成長するために運命が引き寄せた、魔法のような時間だったのかもしれない。だとしたら、もう彼らなら大丈夫ということなのだろうか。

 俊平、礼、めいく、黒崎、そして銀治も。親と子だけでは解決できなかったことを、家族のような他者と分かち合っていくことで乗り越えていく方法を習得しつつある。そして公式HPのあらすじを見ると、俊平が「今度は自分が話を聞く番だ」と屋上で蒼介に語りかけるシーンがあるという。予告映像では第1話を彷彿とさせる俊平の涙も。

 みんなの心を解かしてきたにじやの屋上で、みんなで最後に蒼介に手を差しのべる。それは夢を諦めなければならないのかと絶望しためいくが曲のアイデアを掴んだように。そして愛妻の死という悲しみから俊平が新しい絵本のメッセージを掴んだように。血のつながった“本物の家族”を失い常に1人で抱え込んできた蒼介が、なんでも相談できる“家族”を掴んだという意味にもとれる。

 彼らなら大丈夫。そう思いながらも、もう少しだけこの家族と温かな時間を共有したいという気持ちでいっぱいだ。巣立ちのときとなってしまうのか、それともまだ見ぬ新たな選択肢を提示してくれるのか。まさに泣いても笑っても最終話。彼らの決断を、家族の一員となった気持ちで尊重しながら見守りたい。

■放送情報
金曜ドラマ『#家族募集します』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:重岡大毅(ジャニーズWEST)、 木村文乃、仲野太賀、岸井ゆきの、佐藤遙灯、宮崎莉里沙、三浦綺羅、丸山礼
脚本:マギー
演出:福田亮介、村尾嘉昭
プロデューサー:佐久間晃嗣、岩崎愛奈、那須田淳
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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