日本のTVドラマは新しい家族のロールモデルを描けるか? 『#家族募集します』の最終的な選択に注視
それにしても、本作を観ていると「家族」のイメージは多様化し、様々な有り方が模索されている時期なのだと改めて実感する。橋田壽賀子の『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)を筆頭に、日本のテレビドラマにはホームドラマの名作が多く、「家族を描くこと」で発展してきたと言っても過言ではない。
同時に模索されてきたのが、血縁や社会的立場に縛られない自由な人々が出入りする疑似家族の可能性だ。山田太一や市川森一といった日本のテレビドラマの礎を築いた脚本家は、日本的な血縁家族のアンチテーゼでとして疑似家族を描き続けてきたが、彼らのテーマは、野島伸司、岡田惠和といった後続の作家にも引き継がれている。
だが現実がそうであるように、ドラマで描かれる疑似家族は志半ばで終わることがほとんどだ。立場の違う他人がいっしょに暮らすことはそれだけ難しいということだが、一方で盤石に思えた血縁家族も少子化、晩婚化、離婚の増加等によって、続けていくことが難しくなっている。
そんな時代の変化を踏まえた上で血縁家族の新しい形を提示したのが、坂元裕二脚本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)だろう。娘が一人いる女社長の大豆田とわ子(松たか子)と離婚した三人の元夫たちの関係が本作では描かれたのだが、別れた後も元夫たちととわ子との関係は続いており、やがて元夫同士にも友情が芽生えていく。
とわ子たちの関係は家族とも疑似家族とも言えない奇妙なつながりだったが、とても居心地がよかった。
おそらくこれからの時代は家族の形も多様化し、コミュニティごとにまったく違う姿に変わっていくのだと思う。その際に重要な課題となるのが「いかにして子どもを育てるのか」ということだ。ドラマが脈々と描いてきた家族/疑似家族が、新しい家族のロールモデルとなっていくことを期待している。
■放送情報
金曜ドラマ『#家族募集します』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:重岡大毅(ジャニーズWEST)、 木村文乃、仲野太賀、岸井ゆきの、佐藤遙灯、宮崎莉里沙、三浦綺羅、丸山礼
脚本:マギー
演出:福田亮介、村尾嘉昭
プロデューサー:佐久間晃嗣、岩崎愛奈、那須田淳
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS