『スペース・プレイヤーズ』『フリー・ガイ』 大手スタジオのコンテンツ活用が本格化?

※本稿には『スペース・プレイヤーズ』『フリー・ガイ』のネタバレが含まれています。

 現在日本でも大ヒット公開中の『フリー・ガイ』。アメリカでは公開4周目でも相変わらず3位とトップ3内に君臨し続け、累計興収は約9200万ドルを記録。予想外の大成功を収めている。また、一足先の7月16日に全米公開された『スペース・プレイヤーズ』も公開週は約3100万ドルで首位を記録し、公開13週になる現在、アメリカ国内では約7000万ドルという結果を叩き出した。早い話、どちらもなかなかヒットしているということだ。『フリー・ガイ』に至っては、スタジオがこの結果に微笑み、続編の制作にも前向きだという。

『フリー・ガイ』(c)2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

 この2作品の共通点は、映画の大きな見どころのひとつとして錚々たる“カメオ出演”が挙げられること。同スタジオ内が権利を持つコンテンツを、これでもかと作品内に登場させているのだ。例えば『フリー・ガイ』はクライマックスでデュードとガイが戦うシーンに登場した、キャプテン・アメリカのシールド(そして「俺の!」と動画を見ながら突っ込むクリス・エヴァンス)。BGMには『アベンジャーズ』のテーマ曲も流れ、ガイはそのままハルクスマッシュもお見舞いさせた。それに留まらず、今度は武器の中からライトセーバーを取り出し、『スター・ウォーズ』の曲とともに振りかざしていく。本作が20世紀スタジオ(旧20世紀フォックス)作品……つまり、全てがディズニーの傘下にあるコンテンツだからこその使い放題っぷりである。

『スペース・プレイヤーズ』(c)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 また『スペース・プレイヤーズ』に関しては、打ち込むだけで腱鞘炎になってしまいそうなほどのキャラクター総出演っぷりだ。映画『カラブランカ』や『オズの魔法使』といったクラシックな作品から『エクソシスト』、『IT/イット』のペニーワイズ、『時計じかけのオレンジ』のドルーグ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のウォーボーイズ、『オースティン・パワーズ』、グレムリン、キングコング、アイアン・ジャイアント、ビートルジュースにロボコップと、映画シーンでアイコニックなキャラクターが登場。さらに、ハンナ・バーベラ・プロダクションのキャラクターも、『チキチキマシン猛レース』からディック・ダスタードリーとケンケンのタッグに、ペネロペ・ピットストップ。そして『原始家族フリントストーン』の面々にヨギ・ベア、ドラ猫大将、『スクービードゥー』と『宇宙家族ジョットソン』と作品ごとにキャラクターが集まって試合を楽しんでいた。HBOからも人気ドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』からトニー・ソプラノが、『ゲーム・オブ・スローンズ』からはドラゴンとホワイトウォーカーが登場。『ハリー・ポッター』のホグワーツ生徒や、『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフとフロド・バキンズ、ゴラムの姿も注意深くみていると見つけられる。もちろん、DCコミックのメンツも忘れちゃいけない。ワンダーウーマンをはじめ、フラッシュ、アクアマン、ハーレイ・クイン、ベイン、リドラー、そして1990年版のジョーカーにダニー・デヴィート版のペンギン、そしてキャットウーマンが試合を観戦していた。はあ、長かった。他にもいるが、全てワーナー・ブラザースが権利を持つ作品やキャラクターである。

『スペース・プレイヤーズ』(c)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 これはもはや“カメオ出演”の域を超えている。ひと昔前は、カメオ出演といえば『ズーランダー』にデヴィッド・ボウイが出たとか『ゾンビランド』にビル・マーレイが出たとか、そういった人気歌手や俳優が本人役で出てくる程度のサプライズだった。それがマーベル・シネマティック・ユニバースの『アベンジャーズ』以降、同じ系列の映画に作品の枠を超えてキャラクターが登場することが増え、それがファンにとってテンションの上がる嬉しいサプライズとなった。それ以前は、よくディズニー映画にこういったカメオ出演が見受けられたものだ。それも、『アラジン』に『リトル・マーメイド』のセバスチャンが出たり、『ターザン』に『美女と野獣』のミセス・ポッツが出たり、『アナと雪の女王』にラプンツェルが出たりなど、イースターエッグに近いささやかな登場っぷりである。

 ところが、『アベンジャーズ』を境に作品を跨いでキャラクターが集結すると、ファンが唸り、興収も桁違いになるように。『X-MEN』が良い例で、過去3部作と新3部作のキャラクターが総出演するような演出になった『X-MEN:フューチャー&パスト』の世界興収がシリーズ内で群を抜いて高い(約7億4800万)。

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