平野紫耀と浜辺美波が初の教師役で名演! 『生徒が人生をやり直せる学校』に感動
岡部を「ズレ」とするなら、樹山は「空回り」だ。けれどそうした空回りーー思いついたら後先考えずやってみる姿勢こそが、槙尾高に新しい風を吹き込んだ。進路希望表を前に、何も書けない生徒、ジョークでごまかす生徒、「こうするしかない」と諦めている生徒。彼らは皆、「将来を選べない」という。働かなくてはならない、家族を養わなければならないーーそれぞれ事情を抱え、今日を生きることで精一杯な彼らが、先のことを思い描けないのは当然だ。
槙尾高、そして生徒たちに、“底辺”というレッテルを貼ったのは誰だろう。冷たい視線、助けてはくれない大人ーー環境が、彼らに“底辺”のレッテルを自ら貼らせてしまったのではないだろうか。けれど、自分で貼ったレッテルならば、いつか自分の力で剥がすことができる。
誰にでも夢を見る権利、叶える権利はあるのだと、まずはそこからだった。「選べるんだよ!」「お金持ちになるには働かなきゃダメだろ。何をしてお金を稼ぐ?」「よし、第2希望も書いてみよう」。樹山による“スペシャル面談”には否定がなかった。だからこそ生徒たちは、まるで連想ゲームのような感覚で、ひととき未来を想像し、口に出すことができた。
未来は、描くことから始まる。原田の「言霊」の教えもあり、生徒たちが自分の人生の存在に気付き始めた重要なシーンだった。
「自分なんかが」何かになりたいなど、恥ずかしくて口には出せない。どうせ叶わない夢なら最初から見ない。その気持ちは、かつて学生だった大人たちは皆、多かれ少なかれ共感するところがあるはずだ。生徒たちは将来を選べないのではなく、選べることを知らない。子どもだから、それが「当たり前」だったから。だからこそ教師が、学校が、行政がーー大人が支援し、可能性を示してやらねばならない。方法は必ずあるはずで、なければ作れば良いだけのこと。
そうして生まれた、槙尾高のインバイト制度はうまく動き始め、乃木(板垣李光人)はシェフになることを決めた。「ありがとね」という、本来の乃木らしい優しい言葉。うっすら涙ぐみながら、嬉しそうに笑う樹山の表情が印象的だった。
ラストシーン。樹山は自動車整備に励む木の葉のもとを訪れた。樹山とラーメンを食べたときのことを、木の葉は一生忘れられないだろう。そのことがきっかけで喧嘩別れになったけれど、大好きな母親が生きていた、最後の日だから。「明日も選べない」、そう吐露したまさに翌日のことだった。
「おごってやるよ」と言う木の葉のはにかんだ表情から、今は自分の足で、自分の人生を歩き始めているのだと分かった。原田の言葉を借りれば「こんなに嬉しいことがあるか」。今度は樹山にとって、忘れられない一杯になるだろう。
■配信情報
『生徒が人生をやり直せる学校』
Huluにて配信中
出演:平野紫耀(King & Prince)、浜辺美波、北村有起哉、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、横内亜弓、板垣李光人、水沢林太郎、青木柚、桜田ひより、田辺桃子、河合優実、篠原涼子(特別出演)、酒井若菜、伊藤英明、國村隼
原作:黒川祥子著『県立! 再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』(講談社 現代新書)
脚本:水橋文美江
演出:平川雄一朗
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之、大護彰子
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
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