死の淵から戻った女性の孤独な復讐劇 中川奈月監督作『彼女はひとり』10月全国公開決定

 映画『彼女はひとり』が、10月23日より新宿K’s cinemaほかにて全国公開されることが決定し、あわせて新ポスタービジュアルと予告編が公開された。

 本作は、2020年に「田辺・弁慶映画祭セレクション2020」にて東京・大阪で上映された、一人の女性の孤独な復讐劇。深田晃司監督作『本気のしるし』の福永朱梨が、誰にも愛されない孤独と悲しみから他人を傷つけ、暴走していく主人公・澄子を演じた。その澄子に翻弄される幼なじみ・秀明役を『きらきら眼鏡』で池脇千鶴とW主演を務めた金井浩人が務め、『牝猫たち』の美知枝、『ミセス・ノイズィ』の三坂知絵子、『幸福な囚人』の山中アラタらが脇を固める。

 監督を務めたのは中川奈月。本作は立教大学大学院の修了製作として作られ、黒沢清監督作品などを多く手がける芦澤明子が撮影で参加し、SKIPシティDシネマ国際映画祭にてSKIPシティアワードを受賞した。中川監督は、その後進学した東京藝大大学院で監督した『投影』ではイラン・ファジル映画祭にノミネートを果たした。

 公開されたポスタービジュアルでは、「孤独な復讐が始まるー」というコピーとともに、瞳を閉じた澄子の姿が切り取られている。

映画『彼女はひとり』予告編

 予告編では、教師である波多野(美知枝)との関係を隠す秀明(金井浩人)が、自殺の死の渕から舞い戻った幼なじみの澄子(福永朱梨)の復讐によって徐々に追い詰められていく様子や、澄子が「なんかぜんぶこわれればいいかなと思って」と独白するシーンが描かれている。

 主演の福永、中川監督のほか、黒沢清、諏訪敦彦、森崎ウィンらからもコメントが寄せられている。

コメント

福永朱梨

『彼女はひとり』の撮影から6年近く経ちますが、こうしてまたスクリーンで上映する機会をいただけて本当に嬉しいです。
映画館で映画を観ることは特別な体験で、かけがえのないものだとコロナ禍の中改めて実感しています。
大好きなこの作品を、スクリーンで観られるこの機会にぜひ観ていただけたら嬉しいです。
この物語が沢山の人に届きますように。

中川奈月監督

映画を監督するという事がどういうものか分からないまま撮らせて頂いたこの作品が、本当に多くの方に支えられて単独公開を迎えられる事が出来て感無量です。撮影から数年が経って色んな方に出会い、この作品の強さについて私が沢山教わりました。あの頃の私にしか作れなかったものと、それに乗ってくれたスタッフ、キャストとの出会いに感謝しています。
ついに多くの方に見て頂けるという事が本当に楽しみでなりません。ぜひ、見に来てください。劇場でお待ちしております。

黒沢清(映画監督)

恋に悩む高校生たちの物語だと思って見ていたら、⻘春という言葉からはるか隔たった、あまりにもダークで狂気的な世界観に震撼していた。これは凄い。少なくとも日本映画で、このレベルに達した学園ドラマを私は他に知らない。

諏訪敦彦(映画監督)

破壊することでしか触れることができない世界を生きる、その絶対的な孤独こそが世界=映画を再生させるはずだという覚悟が全編に漲っている。そして「彼女はひとり」ですべてを敵に回し、否定することで世界を抱きしめるという離れ業を堂々とやってのけるのだ。驚嘆した。

森崎ウィン(俳優)

こんなにドキドキした1時間、味わった事がない。ストーリー運び、俳優が吐く言葉、凄く好きです。脚本が欲しい。女優、福永朱梨さん、素敵過ぎました。本人には恥ずかしくて直接言えないのですが、そう強く思えた作品に出会えました。

根矢涼香(女優)

福永朱梨さん演じる澄子の、時折訴えかける眼の奥の寂しさに心が消え入りそうになる。
皆が皆、好き勝手に吐き出して、散らかして、残されたものは顧みずに踏みつけて歩いていく。
誰もこの声など聞こえていない、見ていない。
どこにもいない。幽霊はどちらかわからない。
引っ掻き回された世界で目を回さずに歩くために、世界をかき回し直す彼女の視界は、明るくなるどころか依然混沌として、周囲を巻き込みながら淀んだ川の底へと、ゆっくり沈んでゆく。

鶴田法男(映画監督)

死の淵から帰還した少女が、ある町のおぞましい人間関係を暴いて崩壊させていく。
イーストウッドの『ペイルライダー』と横溝正史の世界が出会ったようなおぞましい物語なのに、若い女性監督が作った爽快なまでのギャップに度肝を抜かれる必見作!

まつむらしんご(映画監督)

ひとりの少女の復讐劇にみえる。 彼女の動機が徐々に明かされる綿密な脚本。 行き場のない孤独と苛立ちを一瞬で伝える俳優の眼差し。 ヘビーな世界観に一筋の光を差し込む繊細な演出。 あえて一言でまとめるなら……傑作。

椎名うみ(漫画家)

可哀想で純粋で暴力的な嵐でした。悲しかったです。
それはわたしがいつも物語の中に求めてる感動です。みんな可哀想でした。
みんな助けて欲しがっていて、助けたがっていて、助けを求められても助けられないことを許して欲しがっていて、それは愛がなければ生まれない地獄でした。

■公開情報
『彼女はひとり』
10月23日(土)新宿Kʼs cinemaほか全国公開
福永朱梨、金井浩人、美知枝、中村優里、三坂知絵子、櫻井保幸、榮林桃伽、堀春菜、田中一平、山中アラタ
脚本・編集・監督:中川奈月
プロデューサー:ムン・ヘソン
撮影:芦澤明子
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:ミカタエンタテインメント
2018年/カラー/ビスタ/60分
(c)2018『彼女はひとり』

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