磯村勇斗、“ワル”な役柄でも好印象 『東京リベンジャーズ』アッくん役で示した存在意義

 さてさて、この流れを汲んで誕生したのが、『東京リベンジャーズ』で演じるアッくんだ。彼は主人公・タケミチ(北村匠海)の親友で、赤髪リーゼントがトレードマークのいかにも不良然としたヤツだが、心根の優しい男である。先に述べてきたキャラクターたちと比べれば、誰よりも陽気で無邪気な愛されキャラの一人だといえるだろう。ここでは、磯村演じるキャラクターの放つワルさよりも、愛嬌の方が圧倒的に溢れている。しかしそれは、主人公にとっては10年前の過去の光景。本作は“ヤンキーモノ”なだけでなく、“タイムリープモノ”でもあり、つまりは“SFヤンキーモノ”なのだ。過去にタイムリープした主人公の行動によって、現在のアッくんの姿は変わってくる。ネタバレ回避のため詳述は避けるが、一人二役とでも呼べるほど、本作で描かれるアッくんの過去と現在の姿は違う。まぶしい笑顔が似合う10年前のアッくんと、“そうではない”現在のアッくん。演じる磯村が見せる表情や、全身にまとった雰囲気のギャップに、目にする誰もが苦しむはずである。どんな未来がやってきても、アッくんには笑顔でいて欲しいーーそう願わないわけにはいかない、まさしく好演なのである。

 こうしてみると、磯村が演じるキャラクターたちは、“ワル”というよりも“やんちゃ”という方がしっくりくる。演じる人物を重層的に表現し、そのなかでも愛らしい(放っておけない)一面をそっと観客に差し出す。ここに、磯村の力量が表れていると思うのだ。放送中の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)で徳川家茂の最期を演じた際に大きな話題を呼んだ一方で、続編がスタートとなった『サ道2021』(テレビ東京系)では年相応の等身大の若者に扮してサウナを堪能している磯村勇斗。どんなタイプの役も器用にこなすが、やはりやんちゃな役を演じているときこそ推したいもの。『東京リベンジャーズ』は若手俳優たちの最前線ともいえる作品だが、ここに磯村はハッキリと自身の存在意義を刻んでいる。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■公開情報
『東京リベンジャーズ』
全国公開中
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載中)
監督:英勉
脚本:高橋泉
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)和久井健/講談社 (c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
公式サイト:tokyo-revengers.jp
公式Twitter:@revengers_movie
公式Instagram:@revengers_movie

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