岸優太がどんどん“頼れるやつ”に? 『ナイト・ドクター』が描く“心のケア”を考える

 階段から転落して搬送されてきた女性に付き添っていた“恋人”の男性が、幸保(岡崎紗絵)の恋人の北斗(竹財輝之助)であったという、美月(波瑠)にフィーチャーした第2話同様に男性の浮気が物語の発端となった7月12日放送の『ナイトドクター』(フジテレビ系)第4話。もちろん今回焦点が当てられているのは幸保だ。ナイトドクターの5人の中で唯一寮に住んでおらず、クールな立ち振る舞いで他の4人との間に一線引いている印象の幸保。彼女がなぜナイトドクターになったのか、そして胸の内に秘めている苦悩などが、前回の桜庭(北村匠海)のエピソード同様丁寧に描写されていくのである。

 自分の経営している店の宣伝のためにインフルエンサーである詩織(松井愛莉)を利用していたが、付き合っていると思い込まれたのだと幸保に説明する北斗。しかしその説明に納得できず、また目の前で北斗に甘えたりわがまま放題の詩織にただただ苛立ちを募らせていく幸保は、美月とも衝突してしまう。幸保が早退してしまった夜、あさひ海浜病院に3名のガス中毒患者が運び込まれてくる。人手が足りないなかで対応に追われる美月と深澤(岸優太)と成瀬(田中圭)。すると1人の患者の容態が悪化。調べてみると過去に診察を受けていた記録が残されており、それはウォークインで診察した幸保がわずかな情報からその患者の持病を見抜いていたことを示すものであった。

 患者として運び込まれてきた相手と揉み合いの喧嘩をしたりと、ある意味では医師による公私混同という医療ドラマらしからぬ描写が連続した今回のエピソードではあるが、主眼となる部分はどうやらそこではなさそうだ。終盤で幸保は、深夜に寝ながら泣いている詩織の姿を見て、彼女が精神的な問題を抱えているのではないかと疑問を抱き、精神科を受診することを提案する。結果的に詩織が境界性パーソナリティ障害であるという診断が下されることになったようだが、引き継ぎで昼のドクターたちに提案した時の彼らの反応や、詩織本人の反応。いまだに「精神科」というものに対して特殊でネガティブなイメージが強く持たれていることが如実に表れている。

 幸保は詩織にこう告げる。「髪が伸びたら美容院に行きますよね。心のケアだってもっと気軽にしていいんです」。何年も前から日本人の5人に1人は何らかの精神疾患を抱えていると言われており、年々それが増加の一途を辿り、特にこの1年半のコロナ禍では急増したとも言われている。経済的な不安や、劇中の詩織のような対人関係における不安など、その理由や症状は人それぞれであろう。幸保もまた、整形外科医の親との関係や北斗への依存傾向から、詩織の状況を他人事には思えなかったと語る。他者への適度な想像力を持ちながら人間関係の中で自分を見失わないでいること、そして医療でも仲間でも、頼れる相手に頼ることが必要なのだと教えてくれるようだ。

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