『おかえりモネ』のメンター“サヤカさん”は唯一無二の存在 夏木マリ自身と重なるその姿

 連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)でヒロイン・百音(清原果耶)のメンター的な存在として登場するのが、百音の就職先である森林組合の創設者であり、下宿先の大家・新田サヤカ(夏木マリ)だ。

 豪快で、潔く、また周囲から頼られる懐の深さ、奥行きを兼ね備え、謎多き女性でもある“サヤカさん”は、いくつになっても自身をアップデートし続けており、その時々の魅力を放っている唯一無二の存在、夏木マリ自身と重なる。

 うんと歳の離れた百音と話すにも決して“説教”臭くはならず、百音からも学ぼうとする姿勢が感じられるサヤカだからこそ、登米の山主だということもあるが"姫"というあだ名も違和感なくハマる。正に夏木が自身のスローガンとして掲げている「マチュレーション・ガール」(=成熟した(マチュレーション)大人でありながら“ガール”のような遊び心を忘れない、の意)という造語にもピッタリの存在だ。

 夏木と言えば、朝ドラ出演は『ひまわり』、『カーネーション』に次いで本作が3作目。『カーネーション』ではヒロイン・小原糸子の晩年を演じ、ナレーションも兼任した。

 今よりもうんと男性社会だった頃から仕事を諦めず闘い続けた自立した強い女性像を演じることが多い夏木だが、『ファーストクラス』(フジテレビ系)での豪華絢爛な“ファッション界のゴッドマザー” 矢野竜子役から、『中学聖日記』(TBS系)での影の支配者でかなり厳格な通称・塩バァこと教頭の塩谷三千代役まで、一口に「自立した強い女性像」と言っても、その中でも様々なバリエーションを演じ分けて見せてくれている。彼女らの努力や苦労の末に勝ち得た“今”の裏に“犠牲”にせざるを得なかったもの、どうしても手放さざるを得なかったものの存在、欠落をふと滲ませ、観る者に彼女らの鎧の下にある悲哀に想いを馳せさせてくれる。

 コロナ禍で特別編が放送された『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)でも、夏木は“キャサリン”と呼ばれる教頭役を好演したが、ここでも高校生の主人公たちに多くは語らずともその時々に必要な示唆に富んだ一言を、彼らへの称賛・叱咤激励と共に毎回手渡し、作中キーパーソンとなっていた。

 かと思いきや、映画『大コメ騒動』ではこれまでの夏木にとっては珍しく、主人公の姑・松浦タキ役で強くて温かい正統派の大正時代の“良き母親”役を熱演した。

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