小川紗良、『海辺の金魚』完成報告で誕生日サプライズ 「25歳の節目でしみじみ思います」

 小川紗良の初長編監督作『海辺の金魚』の完成披露舞台挨拶が6月7日に東京・新宿武蔵野館で行われ、小川監督、出演の小川未祐、福崎那由他が登壇した。

 本作は、児童養護施設で暮らす少女たちの世界と心の成長を描く人間ドラマ。花は、母親が起こした事件のせいで小さい頃から施設で育つ。施設で過ごすことのできる最後の夏、母を取るか施設の子供たちを取るか、花は選択を迫られる。花の視線の先には、1匹の金魚。母との記憶を巡りながら、彼女は金魚を手に海へと向かう。

 小川監督は、「スタッフ、キャスト、素晴らしい方々に集まっていただき、ひとつひとつ手探りしながらやってきた作品です。編集期間の最中にコロナ禍に入り、上映も延期にもなったりもしたのですが、ようやくこの日を迎えることができたこと、本当にうれしいです」と挨拶。

 本作の制作がスタートしたのは2019年。小川監督の過去作にも出演している小川未祐との「もう一度一緒に映画を作りたいね」という会話をきっかけに企画は動き出した。初めは短編映画としての制作だったというが、企画を進めていく過程で長編作品に。そこから小川監督自ら小出大樹プロデューサー、山崎裕カメラマンにオファーする形で商業映画としての骨格が作られていった。小川監督は、「撮りきったときも配給先も公開館も、映画祭も決まっていた状態ではありませんでした。小出プロデューサーと一緒に本当に一歩ずつ歩みながら手探りでやってきました」と振り返った。

 主演を務めた小川未祐は、「お芝居を初めて一番最初のお仕事が(小川)紗良さんの監督作品でした。お芝居のことも映画業界のことも何も知らない頃で。あれからいろんな現場に行って、お芝居とは何なのかを知っていった部分が沢山あります。今回、2回目の紗良さんの作品に出演して、いろんな現場を知ったからこそできるようになったこと、あの頃持っていたけどなくなってしまったもの、両方があるなと。でも、あの頃のものづくりに対する純度は何も変わっていなくて、こうしてまた一緒に作品を作ることができて本当によかったです」と感慨深い様子。

 本作のタイトル『湖辺の金魚』は制作当初は違うものだったという。小川監督は、「スタッフと打ち合わせを重ねていく中でこのタイトルがあがったときに、それだ!と。金魚は海では生きていくことができない魚です。そんな矛盾をはらんでいる感じが本作そのものだし、主人公・花の心情にも表れているんじゃないかと。タイトルが定まったことで脚本も進んでいきました」とタイトルの意図を説明した。

 小川組に初参加となった福崎は、「撮影中も監督がすごくこだわってテイクを重ねていくのが印象的でした。役として“生きやすい”環境で、俳優としても活躍している小川監督だからこその心遣いだったなと思います」と小川監督の演出を絶賛した。

関連記事