『おかえりモネ』内野聖陽が子離れする父親を好演 百音が島を離れた理由

 晴れて森林組合に正式採用された百音(清原果耶)は小学生の体験学習を担当する。『おかえりモネ』(NHK総合)第7話は、子どもを見つめる親の視点が印象的な放送回となった。

 娘を心配して登米にやって来た耕治(内野聖陽)は、サヤカ(夏木マリ)に招かれて百音の職場見学へ向かう。元気いっぱいの小学生を前に遠慮気味だった百音は、子どもたちと接するうちに生き生きとした表情を浮かべていた。

 体験学習あるいは大人の社会科見学? 少なくとも耕治にとって実りある保護者参観となったようだ。屈託のない百音の笑顔はたしかな安堵とともに一抹の寂しさを運んできた。そんな父親にかけるサヤカのメッセージ(直球)。「どんなにかわいくても、ずっと手元に置いどぐのは違うど思いますよ」。うつむく耕治。「分がってます。でも」と続けて「娘が可能性を見つけたいって顔じゃなかった」。

 ここまで約5分、耕治目線のカメラアングルで進行してきた『おかえりモネ』。場面は2カ月前に戻る。雪の降りしきる亀島の永浦家。「もう1年、大学受験頑張ってもいいのよ。無理にうちの仕事やらせようなんて、おじいちゃんも思ってないし」と気遣う亜哉子(鈴木京香)。「やりたいごどでもあんのか?」と尋ねる耕治。後ろ姿の百音は「そういうのがあるわげでもない」。そして、あのセリフが飛び出した。

 「とにかく私はこの島を離れたい」の「とにかく」に込められた意図を私たちは知るすべがない。両親も同じだ。時間をかけて積み上がった屈託は言葉にならないほどで、百音自身、十分に理解していない可能性もある。消去法でしか見つけられない何かであり、切実に百音を突き動かす「ここではないどこか」への渇望。無表情な娘に耕治が危惧を抱くのは当然である。「親としては何が何でもその手を放しちゃいげなかったんじゃないがって」。耕治の中でずっと引っかかっていたのだ。

 しかし心配は杞憂に終わった。無心に小学生の相手をする百音は生気にあふれており、2カ月前とは別人のよう。娘の決断が間違いではなく、もう子どもではないと悟った耕治は、百音に手作りの笛を渡す。祈りにも似た思いを込めて。静かに子離れする父親の視線を追うように、主観から客観へと移行する画面構成が秀逸だった。

 父親と対照的にどっしり構えている母・亜哉子と祖父の龍己(藤竜也)。ラフターヨガの笑い声を聞いて百音は大丈夫だと勘違いする龍己はご愛嬌だが(間違っているわけではない)、海に生きる人々のおおらかさを体現していた。菅波(坂口健太郎)と耕治のニアミスや『半分、青い。』(NHK総合)を彷彿とさせる笛など気になる描写もあった。自分の道を歩み始めた百音を家族とともに見守っていきたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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