「恋」しか知らなかったラファエルの「愛」の決断

　ラファエルはオリヴィアと再び恋に落ちて元の世界に戻れるのか……と、誰もがドキドキワクワクさせる展開の中で、もっとも見どころとなるのがラファエルの「恋」が「愛」へと転換する瞬間だ。

　自分が幸せになる世界に行くために彼女を引き寄せるのではなく、彼女の幸せを心から願うということ。ラファエルの「愛」の決断を通じて、私たちも改めて「愛」を知ることができるのだ。また、この物語が、ユーゴ・ジェラン監督が「自身の結婚生活を見つめ直すことで生まれたオリジナルストーリー」という背景を知ると、より親近感を覚える。

　「いつもそこにいるからといってその人たちのことを蔑ろにしてはいませんか？　大切な女性を初めて出会った日のように、改めて見つめるチャンスなんて滅多にありません」と語るユーゴ・ジェラン監督のキュートなコメントも、またくすぐられるではないか。

　もともと2020年5月1日に公開予定だった本作。エンタメのあり方そのものが問われたコロナ禍を経て、2021年5月7日に公開が決定したのも、今こそ世界中で「愛」について考えるべき時代なのだという大きな流れも感じる。

　映画館で作品を楽しむという時間そのものに、一緒に観に行くことができたその人に、またはこの映画を共有したいと思った今は離れたところにいるあの人に……当たり前にあった「愛」を改めて考えさせられることだろう。

　どんなに思い通りにいかない世界になったとしても、私たちの恋も愛も止めることはできない。その恋に、そして愛に、触れるたびに、私たちはきっと強くしなやかになっていくのだから。そう気づかせ、一歩を踏み出させてくれる『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』は、まるで“観るパワースポット”となりそうだ。

■公開情報
『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』
5月7日（金）新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
監督：ユーゴ・ジェラン
出演：フランソワ・シビル、ジョセフィーヌ・ジャピ、バンジャマン・ラベルネ
配給：シンカ
提供：シンカ、フラッグ、ハピネット
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