アニメ・オブ・ザ・イヤー受賞の『呪術廻戦』 海外アニメファンはどう見ている?

 さらにアップデートの意では、RT TVというLAのリアクター集団のあるメンバーが、最終話を迎えて興味深い見解を述べていた(※一般人であり個人の意見です/参照:https://www.youtube.com/watch?v=JRc__Pu3d-4)。

 最終話の展開に大盛り上がりだった彼らは、虎杖と釘崎のコンビネーションを称賛。そこで、あるメンバーが呪術高専1年組を「NARUTOの3人組み超え」と言い始める。五条悟がカカシ先生を彷彿とさせることもあり、こと過去のヒット作において『NARUTO』はもっとも『呪術廻戦』との引き合いに出される確率が高かった。そんな彼は、その発言の意図を噛み砕くように、以下のようにまとめていた。

「なんとなくこのアニメを観ていて90年代のそれを感じさせるものがあった。みんなもそうかもしれないけど、子供の頃に『NARUTO』を観ていたときの気持ちになったんだ。毎話観る度に、自分が知っているものに触れていると感じた。タイムレスで伝説的だったあの頃のものを。『進撃の巨人』もクラシックだけど、あれはニュークラシックだと思う。『呪術廻戦』はその点、他のアニメからの引用を踏まえて過去のものを新たに構築している。他のアニメと比べると戦闘シーンを含むあらゆる点でペースが早くなっていて、僕らの注意をずっと引きつけている。虎杖と野薔薇の顔を交互に映したような演出も、このアニメは戦闘シーンをこれまでにない新たなアングルで描いていると思う。2021年に、『NARUTO』を初めて観たときのような高揚感を再び感じられて嬉しいよ」

なめらかなアクションシーン、圧倒的なMAPPAに対する賞賛

 今回、『呪術廻戦』の海外の反応をキュレーションしていてもっとも多く見受けられたのが、本作のアニメーションを手がけているスタジオ、MAPPAへの賞賛の声だ。第2話で描かれた五条悟と両面宿儺の戦闘シーンからすでに「滑らかなだ!」と、キャラクターの動きの機敏さが指摘されていた。それは第10話「無為転変」での七海と真人の戦闘でも盛り上がりを見せ、その動きは多くの海外ファンから “液体”とまで称されたものだ。しかし、どちらかというとアニメ前半の第12話までは、動きのシーンよりもMAPPAの“表現力”が注目されていた。

 呪力や呪霊の描き方ひとつとってもそうだが、例えば第2話では虎杖が火葬した祖父の骨を拾いながら、五条と話すシーンがある。箸を使って骨を拾う様子に「箸を使うの?」と驚く反応が多い。実はここの焼き場はアニメオリジナルのシーンなのだが、そういった日本の文化を忍ばせている点も、国内だけに止まらず世界に通用する作品を世に放つというスタジオの気概を感じるのだ。他にも、第3話の原宿の描写の再現度の高さや、噂話をされるとくしゃみするという描写も日本独特の(他の国にはこの考えはない)ため、「なんか日本のアニメではこういう表現多いよね。なんかそういう迷信なんだよね確か」と、そこに気づく海外ファンが多い印象だった。

 しかし、やはり海外ファンが語彙力をほぼ失い「MAPPA!」としか画面に向かって叫ぶことしかできなくなったのは、後半の姉妹校交流会での作画からだ。

 第17話での西宮のほうきの動き、真依の作った銃弾のアニメーションは「予算かけすぎ」と茶化されるほどだったが、誰もが(もちろん国内ファンも含めて)度肝を抜かされたのは第19話の「黒閃」、そして第20話の「規格外」だろう。YaBoyRoshiという3人組リアクターは、花御が生み出した巨木を虎杖と東堂が駆け上がりながら戦うシーンに終始絶叫し、「これ観たことある! ターザンだ!」と興奮を抑えられない様子だった。確かに、ターザン。そして「規格外」では五条の放った虚式「ムラサキ」の描写に多くの海外ファンが興奮した。もちろん、最終話「共犯」の音楽と連動してたたみかける虎杖と釘崎のデュオにもファンは沸いた。

 こういったダイナミックな動きと細かな体術の表現は、国内外問わず誰をも圧倒させるのが、MAPPAの腕前なのだろう。しかし何となくだが、海外のファンの方がアニメをスタジオで観ているような印象がある。例えば日本ではそのアニメの原作がどこで連載されていたのかという情報もある中で、海外では「あのアニメを手がけたスタジオ」という認識の方が断然に強い。その点、同時期に配信されていた『進撃の巨人 Final Season』を含めMAPPAへの支持がグッとあがり、今は同スタジオが手がける『チェンソーマン』の放送を楽しみにしている声も多い。

関連記事