『岸辺露伴は動かない』アニメも実写も続編希望! 作品から伝わる原作への愛と挑戦の意志

 露伴の声を演じる櫻井孝宏は、実写版にも予告編のナレーションと各回にカメオ役として出演した、言わば実写とアニメを繋ぐ存在である。『富豪村』で別荘を購入する話を持ち出す泉京香に「おいおいおいおいおいおいおい。だからおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。やっぱり買う話してるじゃあないか!」と言い放つ露伴のセリフは、彼の口癖の一つ「おいおい」の連続と実写でも強調されていた「じゃあないか」の言い回しが合わさっている印象的なフレーズだ。

 これをそっくりそのまま実写でやればたちまち違和感となって世界観を壊すセリフになりかねないが、アニメでは不思議と成立してしまうところが、実写とアニメとの境界線。「オラオラ」や「無駄無駄」ラッシュよりも難しいであろうこのセリフを、いともたやすく画に乗せてしまう櫻井孝宏の力量も素晴らしい。荒い息を出しながら大声でセリフを言う『ザ・ラン』でのバトルは、この4作品において一番の聞きどころポイントだ。

 ちなみに、『懺悔室』が『週刊少年ジャンプ』に掲載されたのは1997年、第5部の連載中だった。物語に出てくる浮浪者の霊には「幸福の絶頂から突き落とされるとき、絶望という俺と同じ気持ちを味わわせてやるためにな」というセリフがあるが、これは第5部に登場するディアボロの「未来という目の前に……ポッカリ開いた『落とし穴』を見つけ! それに落ちる事がなければ人生は決して『沈む』事がない。『絶頂』のままでいられる」という考え方と酷似している。

 『懺悔室』で語られる幸福論は(内容は違えど)第5部の中でも度々提唱されており、その時期の荒木の作風と思想が色濃く真空パックされたエピソードでもある。ほかにも、2008年、第7部『スティール・ボール・ラン』を連載中に描かれた『六壁坂』では、釜房郡平が「SBR(スティール・ボール・ラン)」とロゴが入った服を着ていたりと、その執筆背景を知るとさらに作品の幅が広がっていき、新たな視点で楽しむことができるだろう。

 実写に、アニメにとこうして立て続けに素晴らしい作品を観てしまうと、やはりどうしてもさらなる続編に期待してしまう。先述したように、アニメならアニメの、実写なら実写の良さを引き出したアプローチの仕方があるはず。個人的に望むのは、アニメでしか成立しなさそうな『密漁海岸』や小説からであれば『Blackstar.』(『岸辺露伴は叫ばない』)、実写では脚本を手がけた小林靖子もインタビュー(『岸辺露伴は動かない』脚本・小林靖子が大事にした荒木飛呂彦イズム 「台詞に“ッ”を入れちゃう」)で挙げていた『六壁坂』、小説からは『検閲方程式』(『岸辺露伴は叫ばない』)といったところだろうか。「To Be Continued」と未来に繋がっていくことを願って。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■配信情報
アニメシリーズ『岸辺露伴は動かない』
Netflixにて全世界独占配信中
原作:荒木飛呂彦(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:加藤敏幸
キャラクターデザイン:石本峻一
アニメーション制作:david production
出演:櫻井孝宏ほか
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない製作委員会
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・岸辺露伴は動かない「六壁坂」製作委員会
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会

関連記事