池端俊策による“本能寺の変”はどんな結末に? “視点の転換”がもたらした『麒麟がくる』の面白さ

いちばん気になるのは細川藤孝の動向

 さらに、現関白・二条晴良(小藪千豊)との政争に破れ、一時は京を追われたものの、信長に近づき、再び上洛の機会を狙う前関白・近衛前久(本郷奏多)も気になる存在だ。彼にとって信長は、まだまだ利用価値があるのだから。けれども彼は、本作においては、光秀と懇意の伊呂波太夫と姉弟のように育った者として、光秀と旧知の関係でもある。次第に追い込まれてゆく光秀を見て、前久は何を思うのだろうか。

 しかし、いちばん気になるのは、やはり光秀の朋友とも言うべき細川藤孝(眞島秀和)の動向だろう。第13代将軍・足利義輝(向井理)の奉公衆のひとりとして出会って以来、義輝亡き後はその弟・義昭を将軍にすべく奔走し、やがて光秀ともども幕府を見捨て、信長の家臣となった藤孝。言わば光秀とは、同じ夢を抱く「同志」であるはずなのだ。しかも、その嫡男・忠興(望月歩)は、光秀の愛娘・たま(芦田愛菜)の夫でもある。つまり、藤孝と光秀は、姻戚関係でもあるのだ。だが、かつて義昭を捨て、信長に付き従うことを決意する際、袂を分かった兄・三淵藤英(谷原章介)に向けて、「時の流れを見るのが肝要である」と言い切った藤孝ではある。彼は、光秀の苦悩をどのように察知し、どんな言葉を彼と交わすのか。そもそも藤孝は、光秀と再び腹を割って話し合う機会を持ちうるのだろうか。

 冒頭に「あと3年!」と書いたものの、天正8年には石山本願寺との長期にわたる戦いの終結。翌9年にはそれを祝して、京で大規模な馬揃えが開催される(光秀はその運営担当を任される)。そこには、光秀をはじめとする信長軍団(秀吉は中国攻めにつき欠席)の他、前久も参加するのだろう。さらに翌10年には、遂に信長軍による甲州・武田征伐が敢行され、光秀も従軍。そしてその後、信長が安土城まで家康を呼び寄せ、宴の席を設けるなど(光秀はその饗応役を任される)、信長のもとで忙しない日々を送り続ける光秀は、そのあいだに誰と会って、どんな話をするのだろうか。そして、最終的にその背中を押すのは、果たして「誰」なのか。

 いずれにせよ、もはや「待ったなし」の状況で、猛然と回り始めた『麒麟がくる』の物語。この「コロナ禍」にあって、中断期間を挟みながらも放送期間を延長し、回を減らすことなくその壮大な物語を全うせんとする、その堂々たるクライマックスに期待したい。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twtter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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