若葉竜也の「千代ちゃん」をもう一度 『おちょやん』“小暮ロス”を起こした優しさ
テルヲのことだから、呼ばれなくても小暮と千代が結婚したら、悪びれる様子もなく堂々と面倒を見てもらいに行くだろう。小暮の両親だけでなく、親戚や仕事の関係者にも金を無心するに違いない。結婚に甘い夢を見られるほど千代は恵まれた環境に育っていなかった。
一平もまた子供の頃から家庭環境に苦しんできたから、千代とは本音で話ができる。千代に「あんたにうちの何がわかんねんな」と言われても、一平は「わかるはずないやろ」と答える。一生懸命わかろうとする小暮は、そんな突き放したような言い方はしないだろう。
苦労を続けてきた千代だからこそ、自分の苦しみが他人に簡単にわかるわけはないと諦めているところもあるだろうし、毒親に縛られることなく自由になりたいに違いない。
「お前の苦しみはお前にしかわからへん。俺の苦しみは、お前なんかには絶対わからへん。そやから俺は芝居すんねん」
一平のその言葉は何よりも千代の心に刺さったはずである。残念ながら、素直で穏やかな小暮のプロポーズよりも、ぶっきらぼうな一平とのやりとりに千代の求める答えがあったということ。
とはいえ、小暮の存在は大きく、SNSでは小暮沼が出来たくらいで、あの「千代ちゃん」と呼ぶ声と笑顔が見られなくなると小暮ロスになる人が続出しそうだ。だが、2月19日公開の『あの頃。』でハロプロヲタ、4月9日公開の『街の上で』では主演俳優としての若葉の演技を観ることができる。『おちょやん』をきっかけに、若葉にとって大躍進の1年になりそうだ。
■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/