『今際の国のアリス』国内外でヒットの理由 『バトル・ロワイアル』から続くジャンル人気から探る
Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』が配信されるやいなや、ユーザーが作品を選んで視聴した回数に基づく国内総合TOP10で首位をキープする人気っぷり。シーズン2の制作発表も最近された本作は、『週刊サンデー』で連載された麻生羽呂による原作を実写化したもの。主人公の有栖(山崎賢人)と親友のチョータ(森永悠希)とカルべ(町田啓太)が、突如無人化した世界に迷い込む。そこで、命をかけた“げぇむ”に強制参加することになり、有栖がそこで出会ったウサギ(土屋太鳳)と協力して挑んでいく物語である。
世界190カ国で配信。英語・日本語・ポルトガル語などの言語で吹き替えも用意されていて、世界に発信するという気概が溢れる作品だ。国外でも主演の山崎賢人はイケメン俳優として注目されており、各国のNetflixアカウントのストーリーや投稿に登場し、話題を呼んでいる。
ジャンルがデスゲームものであり、ところどころ残酷な描写もある本作。国内では主演タッグをはじめとする人気俳優が多く出演していることもあって、普段デスゲームものを観ないファン層にも浸透している。本稿では、日本で根強いジャンルとして確立されたデスゲームものについて、考察する。
ジャンルとしての立ち位置:俳優の登竜門
映画としての本ジャンルは、アイドルや売り出し中の俳優の“登竜門”的立ち位置にもなっているのが特徴的だ。例えば『バトル・ロワイアル』には柴咲コウ、栗山千明、安藤政信といった今となっては有名な俳優も多く、特に主演の藤原竜也はその後、『カイジ』『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』とデスゲームものの常連俳優となっている。その後、多くの作品が2000年代後半から今にかけて公開されてきたが、中には『JUDGE/ジャッジ』(瀬戸康史、有村架純)や、『神さまの言うとおり』(福士蒼汰、福士蒼汰、山崎紘菜、染谷将太、神木隆之介)のように、そのとき最も旬の俳優らが起用されるようにもなった。そうすることで、少しニッチな市場だった本ジャンルが、より一般的に開かれたように思える。『今際の国のアリス』もこれと同じ流れを汲んだ作品であり、よりオープンなデスゲーム作品として作られたことがヒットに至った一因だろう。
デスゲームものが流行ったきっかけ『バトル・ロワイアル』誕生の背景
デスゲームジャンルというものを確立させたといっても過言ではない、『バトル・ロワイアル』。海外からの評価も高い本作の原作となった同名小説は1997年に発表された。この頃、世間では90年代後半にかけて青少年が主犯の凶悪犯罪が増加。そこに加え、バブルが崩壊した背景を含め、上昇志向と世の中(社会)を生き残らなければ、という空気感が出始めてきた。そう、まさに映画の劇中で北野武が生徒全員に言ったように「人生はゲームです。みんなは必死になって戦って生き残る、価値のある大人になりましょう」という風潮だったわけだ。
その最中に生まれた『バトル・ロワイアル』は早速2000年に映画化され、後のデスゲームものに大きな影響を与える。中学生が同級生と殺し合いをする映画。1999年にアメリカでコロンバイン高校銃乱射事件が発生し、世界的にも少年犯罪に強い関心が寄せられていたこともあって、本作は海外からも強い注目を浴びた。これをきっかけに、海外でも生死をかけたデスゲームものとして『ハンガー・ゲーム』、『ソウ』などのヒットシリーズが生み出されていくようになる。