窪田正孝は“2020年の顔”に 朝ドラ『エール』などで磨き上げた主役としての器

 この2020年における“エンタメ界の顔”の一人といえば、やはり多くの方が窪田正孝の名前を挙げるのではないだろうか。主演映画が2本も公開され、朝ドラの主演俳優として激動の1年を駆け抜けた。彼から“エール”を受け取った方も多いことだろう。もれなく筆者もその一人だ。

『ファンシー』(c)2019「ファンシー」製作委員会

 さて、まずは今年の窪田の活躍を振り返りたい。先に記したように、主演を務めた映画である『ファンシー』、『初恋』の2作が、2月に立て続けに公開された。若くしてかなりの数の映画出演を重ねてきた窪田だが、ここ数年は『東京喰種トーキョーグール』(2017年)、『犬猿』(2018年)、『東京喰種トーキョーグール【S】』(2019年)など、主演を務め、作品の看板となることも増えてきた。それも、ド派手なアクションが展開する大作から、会話劇が中心の単館モノまで多岐にわたる。そしてこの間に、『僕たちがやりました』(2017年/カンテレ・フジテレビ系)や『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(2019年/フジテレビ系)といったテレビドラマでも主演を。さらに2019年には舞台『唐版 風の又三郎』でも主演を務めている。“主役としての器”を磨いてきたのだ。

『初恋』(c)2020「初恋」製作委員会

 そして迎えた2020年。永瀬正敏、窪田、小西桜子ら演じる男女の奇妙な三角関係を描いた『ファンシー』は単館作品であり、バイオレンス映画界のオーソリティーである三池崇史監督が初めてラブストーリーに挑んだ『初恋』は、大々的に全国展開された。どちらも同月に公開されたこととあって、窪田の芝居のその振れ幅に驚かされた方は少なくない。後者に関してはラブストーリーとはいえ、あくまでもあの“世界の三池”の作品。一筋縄にはいかない。余命宣告されたボクサー(窪田正孝)が、ヤクザや中国マフィア、悪徳刑事らから一人の少女を守るため抗争に巻き込まれていく……というとんでもなさであった。しかもこの少女を演じているのは『ファンシー』にも出演の小西。同時期に、同じ組み合わせの異なる関係性(=演技の掛け合い)を目の当たりにすることができたのだ。小西は新人とあって、その手を引いたのはやはり窪田の方であろう。

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