『恋あた』健気すぎるマコッちゃんの奮闘 クリスマスに樹木を笑顔にできるのは誰?

 恋をするということは、相手を想うのと同時に自分を愛する作業でもある。相手を幸せにしたい。そう願うのと同じくらい、自分が幸せであることも大切なのだから。

 『この恋あたためますか』(TBS系)第8話。クリスマスまで新谷(仲野大賀)と過ごしてみることを選んだ樹木(森七菜)。まだ、樹木の心の中には浅羽(中村倫也)が完全にいなくなったわけではないことはわかっている。それでも、新谷は樹木がくれたせっかくのチャンスを、掴んでくれた手を離すわけにはいかなかった。

 「いっぱい飯つくるから」「夢が広がるな」。樹木と過ごす時間は夢のように楽しくて、そして本当に夢になってしまいそうな不安もよぎる。わざわざ浅羽と里保(石橋静河)がいるところに樹木と手をつないで現れ「デートだ」だと強調してみせるのも、夢が現実になるようにと願ってのことだろう。

 浅羽の前に来たら髪を触る素振りで手を離されたとしても、「クリスマスが嫌いな人にも食べてもらえるケーキを」と浅羽を想ってクリスマスケーキの企画を出し続ける姿を見せられても……新谷は何度だって樹木の手を掴み直す。冷えた手に手袋をかぶせてまで、何度でも何度でも。

 でも、そうして頑張れるのは「クリスマスまで」と決めた勝負の期間だからかもしれない。今、樹木の手を掴んでいるのは確かに自分。けれども、その目が見つめる先は今も浅羽だ。樹木が元気がないときに再起動してあげることはできても、浅羽のように新しい世界を広げてあげることはできない。この先、幾度となく浅羽によって魅力的になっていく樹木の姿を、いつもそばで支え続けることに耐えられるだろうか。

 そのモヤモヤに対して先に結論を出したのは、里保だった。樹木から返されたスノードームを目の届くところに置き続けている姿に、新作スイーツの発売日にアップされる「キキかじり」が更新されないことを気にかける姿に、何よりも樹木と接するたびに人として成長していく姿に……浅羽が本当に見つめているのは樹木なのだと思い知らされる。浅羽の手を掴んでいるはずなのに、いつだって触れられる距離にいるはずなのに、浅羽の心が遠く感じて仕方ない。

 もっと自分のことを見てほしい……。かつて、里保はその本音を飲み込み、「別れよう」と浅羽に告げた。不安や寂しい気持ちを隠し、いい女でいようとした里保は我慢ばかりをしていたと振り返る。本当は追いかけてほしくて、一方的に突きつけた別れ。その結果、浅羽は里保が何を不満に思っていたのかを振り返ることができないまま、そして里保もまた本音でぶつかることが苦手なままで時間が止まっていた。2人は再開して付き合うも、やはり同じ壁にぶつかるのだ。以前に比べると里保は少しだけワガママになれたが、それも樹木に影響を受けて変わっていく浅羽を知ることができたからだとも言える。

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