『呪術廻戦』『泣き猫』『約ネバ』など、人気アニメ・漫画関連作品の主題歌に共通点?
今も昔も人気が衰えない、いやむしろ拡大しつつあるコンテンツ、アニソン。「アニメソング」の略語で、アニメの主題歌や挿入歌を指すものだ。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌であるLiSAの「炎」など、現在も多くのアニソンがヒットチャートをにぎわせている。
いまや、多くのミュージシャンにとってアニメタイアップはブレイクのチャンスであり、『名探偵コナン』とZARDや倉木麻衣、B'z、『黒執事』とシド、『銀魂』とDOESやSPYAIRのように、「このアニメといえばこのミュージシャン」というイメージもあるだろう。国民的アニメの『ドラえもん』も、星野源や秦基博、福山雅治にスキマスイッチ、山崎まさよし、Mr.Childrenといったミュージシャンを主題歌に起用してきた。
作品を象徴する楽曲であると同時に、時代とともに移り変わってきたアニソン。例えばASIAN KUNG-FU GENERATIONたちが台頭してきたときは『NARUTO ナルト』など、ロックチューンを主題歌に起用する作品が多かっただろうし、Aimerのように抒情的に歌い上げるシンガーの起用がトレンドだった時期もあっただろう。そんななか、いま現在は「ネット発」と言われるミュージシャンたちが、続々と主題歌に起用されている。今回は、その動きを整理しつつ、彼らとアニメ作品の相性の良さを考えていきたい。
いわゆる「ネット発」のミュージシャンといえば、先駆け的な存在として米津玄師が挙げられるだろう。2018年にドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の主題歌で大ブレイクする以前から、『3月のライオン』や『僕のヒーローアカデミア』といったアニメ作品の主題歌を手掛けてきた。前者はBUMP OF CHICKENやYUKIに続く形、後者は第1期のポルノグラフィティに続いての起用だ。この辺りをみても、当時の期待度がうかがえる。
そして現在では、「ヨルシカ」「ずっと真夜中でいいのに。」「YOASOBI」「Eve」といった面々が、アニメや漫画の派生作品で大活躍中。10代・20代を中心に支持を得ており、アニメの視聴者と層が重なることもあろうが、元々のMVもアニメーションで制作されたものが多く、親和性が高い。今後ますます、彼らの勢いは増していくことだろう。
2017年に結成されたヨルシカは、6月にNetflixで配信されたアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』に3曲を提供。本作は新型コロナウイルスの影響で劇場公開からNetflix配信に切り替わったため、目にした人も多かったのではないだろうか。
本作は猫に変身できるお面を得た女子が、意中の男子と猫の姿で交流する恋愛ファンタジー。文芸作品から強い影響を受けているコンポーザー、n-bunaの紡ぐ詩情豊かな歌詞を載せた楽曲群と、スタジオコロリドの絵本的な世界観が、絶妙に重なり合っていた。その後、漫画『よふかしのうた』の特別PVに、楽曲「逃亡」を提供。“夜”つながりのコラボレーションとなった。
「ずとまよ」の愛称で親しまれるずっと真夜中でいいのに。は、2018年に始動。YouTubeでの楽曲投稿で火が付き、今年に入ると、人気漫画を実写化した映画『さんかく窓の外側は夜』『約束のネバーランド』の2本の主題歌タイアップが決定。
岡田将生、志尊淳、平手友梨奈が共演した『さんかく窓の外側は夜』は、除霊師の男性と霊が見える男性がコンビを組み、不可解な事件を追うホラーミステリー。こちらも“夜”つながりのタイアップとなっており、主題歌の「暗く黒く」はBL(ボーイズラブ)の要素もはらんだ世界観を体現したような、美しくもミステリアスな楽曲になっている。「トライアングルな縁に浸っても」「やつが暗く黒く 塗り潰したとしても」といった、作品のキーワードをちりばめた、独特の言葉選びも異彩を放っている。
『約束のネバーランド』は、異形の鬼たちの食料として育てられた孤児たちが、自分たちの生を得ようとするダークファンタジー。ずっと真夜中でいいのに。の特徴として、切実な想いがボーカルACAねの高音域で表現される“エモさ”があるが、主題歌「正しくなれない」は、タイトルからして強いメッセージ性を感じさせる。まだ全編は公開されていないが、映画の予告編に収録されているパートだけでも、食用児たちの“痛み”を請け負ったような切々としたメロディと声が、耳に残る。