海宝直人、小南満佑子らミュージカル俳優が活躍 『エール』で届けられた“音楽”の持つ真のパワー
音のライバルでありよき理解者 小南満佑子
音の音楽学校時代から音のライバルであり、その一方で音のことを誰よりもよく見ていた千鶴子。オーディション参加者と審査員という関係になってもその視点は変わらなかった。知り合いだからといって「審査は公平にやりますから」と言い切った千鶴子は実際に最終審査で音ではない受験者に票を投じる。しかしこれは、千鶴子の音への最大の敬意であり愛だろう。音がもがきながら稽古する様子を心配そうに見つめ、さらに音から相談を受けた時は真摯に真実を伝える。千鶴子のスタンスはいつでもフェアで、さっぱりしているのだ。音と千鶴子は熱くなりすぎることもなく、情や憎悪が湧くこともない、独特の距離感でライバル関係を表した。その実、音にとっていつでもよき相談相手であり、信頼に値する相手でもあろう。小南はそんな千鶴子を、愛想のよすぎないクールさを持って演じる。ここで千鶴子に少しでも音に対する情や気持ちが強く伝わってしまったら、視聴者は千鶴子のことも色眼鏡で見てしまったはずだ。小南の芝居のクールさは、千鶴子の気持ちを邪推させないそんな粋な計らいを感じた。さらに小南もまた、歌唱力で力を魅せられる女優でもある。ヒロインの挫折の前で、前進し続ける存在としてふさわしい存在感を見せた。
他にも『エール』で活躍しながらミュージカル界や舞台で輝く俳優はたくさんいる。こうした俳優陣に支えられながら、“音楽”の持つ真のパワーに触れられることこそ『エール』の唯一無二の魅力であろう。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/