小芝風花の台詞に詰まっていた女性へのエール TBSドラマの本領発揮『書類を男にしただけで』
信玄堂へのプレゼンで祐希が語ったのは、女性の生きづらさが分かる出来事の数々。開業医の家に生まれた子供が女というだけでがっかりする親戚、男の子と遊んでいるだけで媚びている、男たらしだと揶揄する女友達。力が強いだけで女扱いされず、就活では顔が綺麗な子から順に内定をもらえる。セクハラを訴えても、相手は会社の屋台骨というだけで罪を免れ、意思表示をしなかった被害者の方が責められる。そのどれもが、女性の心を蝕んでいるという事実はなかなか伝わりづらい。
なぜ自分は女に生まれたんだろう。女に生まれなかったら、男に生まれていたら、人生はもっと上手くいくのに――。祐希がキャリアを投げ捨てでも本当の性別を明かしたのはきっと、この国に生きるすべての女性に女として生まれたことを後悔させないためだろう。女だってパンツスーツを履いてもいいし、反対に男だってメイクしてもいい。誰もが願っているのは、「自分のなりたい自分でいられて、誰に傷つけられることのない人生」だ。
色んな人が生きる社会だから、現実はすぐに変わらないかもしれない。けれど杉田が祐希に贈った言葉のように、当たり前のようで当たり前に叶えられない願いをたった1時間に凝縮して届けてくれたこのドラマは、世間の荒波にもまれる私たちの生きる活力になる。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter
■作品情報
『書類を男にしただけで』
TVerにて、10月18日(日)まで配信中
出演:小芝風花、竜星涼、水沢エレナ、奥野壮、高橋メアリージュン、デビット伊東、友近
脚本:飯野陽子
プロデュース:中西真央
演出:石井康晴
製作著作:TBS
(c)TBS
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