伊吹と志摩のように前に進むしかない 『MIU404』が視聴者に向けて投げかけたメッセージ

 9月4日に最終回を迎えた『MIU404』(TBS系)の余韻と興奮がいまだ冷めやらない。「綾野剛と星野源という綺羅星のごとき二大スターを主役に据えた、スピード感あふれる痛快刑事ドラマ」という“ガワ”をまとったこの作品が、2020年の夏に日本の視聴者に向けて投げかけたメッセージはあまりにも深遠で、巨大な銅鑼の残響のように今も鳴り続けている。

「一話完結のノンストップ『機捜』エンターテインメント!」

「綾野・星野がバディを組み24時間というタイムリミットの中で犯人逮捕にすべてを懸ける!」

 『MIU404』の番組公式サイトのイントロダクションにはこう書かれている。放送開始前の番宣やスポットCMを見る限りでは「華やかなキャスティングだな」「なにやらテンポの良さそうなドラマだな」ぐらいにしか思っていなかったのに、いざ蓋を開けてみればその見事な作劇と構成、物語の深淵にぐいぐいと心を掴まれていった視聴者は少なくないのではないだろうか。

 『MIU404』は「刑事ドラマ」という箱の形をしていながら、中に詰まっているのはまぎれもなく人間ドラマだ。それも、世界の歴史に刻印されることとなったこの2020年を生きる我々に痛切に響く、とてつもなくアクチュアルな人間ドラマだ。もともと社会問題に深く切り込んだ作劇であったところに、コロナ禍に起こったさまざまな事件や現象が不思議なくらいにシンクロするという事態は、作り手も予想だにしていなかったことだろう。

 緊急事態宣言発令で撮影がストップし放送が約3カ月先送りに。話数も削減された。制作陣は口々に「綱渡りのような心境だった」と語り、一時は放送そのものさえ危ぶまれたという。そんな中このドラマを最終話まで届けてくれたことに感謝の念を禁じ得ない。天変地異により生じたハンデにも屈せず、むしろそれを逆利用するかのように、オリンピックが延期されたコロナ禍の2020年を生きる私たちに向けた「それでも今できることを積み重ね、日々を生きていく」というメッセージをこめたエンディングに変更した。奇しくもこの未曾有の事態が画竜点睛のような役割を果たすことになったという、ドラマの成り立ちのミラクルさも含め忘れることのできない作品となった。

 こうした境遇にさらされながらも“生き延びた”ドラマだけあって、回を追うごとにスタッフ・キャストの「祈り」にも似た気迫が画面越しにひしひしと伝わってきた。特に綾野剛・星野源の主演両者と、久住を演じた菅田将暉の鬼気迫る演技はK点を超えた感があった。「少しでも良い世の中を目指し、身を賭して闘う」という姿勢が、物語の中の伊吹と志摩、それを演じる綾野と星野、共演者、スタッフのストイックさと見事に交差していた。