『わたナギ』ロスはなぜ起きる? 火曜ドラマが描くアラサー女性の心境と呪いからの解放

 メーカー勤務・バリキャリ独身女性にとっては、『逃げ恥』で石田ゆり子扮する主人公の伯母の“呪い”についての発言が印象的だったと教えてくれた。石田が演じたのは化粧品会社で多くの部下を抱えながら働くアラフィフ独身キャリアウーマン。20代前半の女性に年齢について意地悪な質問を投げかけられた際の回答があまりに秀逸だ。

「私が虚しさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性がこの国にはたくさんいるということ。今あなたが価値が無いと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。自分がバカにしていたものに自分がなる。それって辛いんじゃないかな。私達の周りにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその一つ。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」

 

 また、心を鷲掴みされた彼女の台詞をもう一つ教えてくれた。「私みたいなアラフィフ独身女だって、社会には必要で誰かに勇気を与えることはできる。『あの人が頑張っているなら、自分ももう少しやれるって』今1人でいる子や1人で生きるのが怖いっていう若い女の子たちに、『ほら、あの人がいるじゃない? 結構、楽しそうよ』って思ってもらえたら、少しは安心できるでしょ。だから、私はカッコよく生きなきゃって思うのよ」

 選択肢が増えた分、画一的で安直な「正解」もなければロールモデルになる存在もなかなか見つからない今。傷つきながらも自分なりの最適解を見つけようとする登場人物たちの姿に自分を重ね、また「選ばなかった側」にいる者の痛みにも触れることこそ、知らず知らずのうちに自身にかけてしまっている呪いを解き、自身に課してしまった重荷を除くことに繋がるのかもしれない。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『私の家政夫ナギサさん 新婚おじキュン!特別編』
TBS系にて、9月8日(火)20:57〜放送(2時間スペシャル)
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

関連記事