『妖怪シェアハウス』の“ハッピーエンド”はどんな形に? 澪の“角”に込められた女性の生き様

 近年、ドラマの世界には、フェミニズムを意識して作られているものが思ったよりも存在している。ただ、初期の段階では、第1話で問題提起をしたのはいいものの、最終的にはヒロインが元の場所に収まり、結局、幸せはその人の考え方ひとつで良くも悪くもなるのだ、と思わせる結末で終わる作品なども見られた。

 そんな結末になってしまうのは、そのほうが従来の「めでたしめでたし」の型にはまっていて視聴者が安心しやすいと、チーム全体で判断したのかもしれないし、結局は、#MeToo運動の表側にだけ触発され、フェミニズムの雰囲気だけを取り入れただけだったのかもしれない。

 しかし、8月から始まった『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)には、今のところ、そんなモヤモヤは見られない。

 ヒロインの澪(小芝風花)は、彼氏に多額の金を貸したために自分の家の家賃も払えなくなり、頼れるのは彼氏だけと、家を訪れるが、あっけなく振られて行く当てがなくなってしまう。そんな澪がたどり着いたのは、妖怪ばかりが住むシェアハウスだった。澪は、最初のうちは彼ら彼女らが妖怪とは知らずに、お岩さん(松本まりか)、酒呑童子(毎熊克哉)、ぬらりひょん(大倉孝二)、座敷童子(池谷のぶえ)の4人と共同生活をスタートさせるのだった。

 澪自身の性格は、頼まれると嫌と言えないし、自尊心も低い。だから、お岩から「男に騙されたんじゃない?」と聞かれてもそんなことはないとあれこれ理由をつけて彼氏をかばうし、お金を貢がされていたことにも怒ることができない。そんな澪をみて、ぬらりひょんは「完全にブレーンウォッシュされておる」「ミソジニーに振り回される運命だ」と告げるのだ。

 そんなとき、澪に一番親身になってくれるのがお岩だ。第1話で澪の酷い身の上を聞いて「大丈夫、あたしがついてる」とお岩が言って、澪が「私が我慢すればなんとかなるのかなと思って。でも、ほんとはつらかったんです」と、初めて本音を見せたシーンにはぐっときた。隣でもらい泣きをする座敷童子との3人のシスターフッドが見えた。

 お岩はもちろん、四谷怪談のあのお岩さんである。お岩さんというと、父親が半ば強引に連れてきた伊右衛門と結婚したものの、夫は浮気相手との間に子供が出来、お岩が邪魔になり酷い仕打ちを重ねられ、自ら家を出ていったという経緯がある。いわば、フェミニズムのなかった時代に、幽霊になるしか手立てがなかった彼女が、男に騙された澪を黙ってみていられないのは当然のことだとも思える。

 ちなみに、第2話には番町皿屋敷のお菊さん(佐津川愛美)が登場し、これまた就職先でセクハラ、パワハラにあってしまった澪のことを黙ってみていられない展開になるのだが、お岩さんとお菊さんが大親友というのも、納得がいく話である。

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