アメコミファン要注目イベント「DCファンドーム」いよいよ開催 ポイントを杉山すぴ豊が解説

 DCがこのようなイベントに踏み切ったのには2つの理由があると思われます。

 1つは、今年サンディエゴ・コミコンのリアル開催がなかったことです。通常、DCはこうした発表をサンディエゴ・コミコンを通じて行ってきました。しかし今年はコロナウイルスによりリアルなコンベンションが実施されずオンラインのみで展開。しかし、どうしてもスケールは小さい。それならばということでDC独自のオンラインコンベンションに踏み切ったわけです。

『ジョーカー』(c)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & (c)DC Comics”

 ならばマーベルも同じことをやってもいいわけですが、ぶっちゃけマーベルは今後数年間の重大発表を去年のサンディエゴ・コミコンで実施しており、今年はわざわざプレゼンをする必要はなかったのかもしれません。逆にDCは、昨年サンディエゴ・コミコンでの映画の発表をスキップしていたのですね。というのもDCの親会社であるワーナーは、昨年は『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の方のプロモの場としてサンディエゴ・コミコンを活用。また『ジョーカー』をアメコミ映画売りしたくないとの理由から、あえてサンディエゴに持っていかなかったようです。しかし今年はDCとしてはどうしても今後の展開についてプレゼンしたいことがあったのでしょう。これが「DCファンドーム」を開きたかった2つ目の理由です。じゃあDCはなにをプレゼンしたいのか?

 恐らくこれからのDC映画・ドラマは映画とTV、そしてHBO Maxという新たな配信サービスの3つで展開されていくということの宣言です。

『ジャスティス・リーグ』(c)JUSTICE LEAGUE and all related characters and elements are trademarks of and (c)DC Comics. (c)2017 Warner Bros. Entertainment Inc. and RatPac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.

 具体的には、映画は来年公開の『ザ・スーサイド・スクワッド』『ザ・バットマン』の2作を起点に新たなDC映画戦略が始まります。そしてTVドラマの方は、今までのDCドラマをけん引してきた『アロー/ARROW』が終わり、ここもまた新たなステージに突入します。一方、ワーナー・グループとして始める動画配信サービスHBO Maxでは、ザック・スナイダー監督による再編集版『ジャスティス・リーグ』やJ・J・エイブラムスのプロデュースによるオカルト系ヒーローを集めた『ジャスティス・リーグ・ダーク』、グレッグ・バーランティによる『グリーン・ランタン』のリブート、『ザ・バットマン』と連動したドラマシリーズなど、映画とTVドラマの中間となるようなコンテンツが予定されています。

 ちょうど1年前、マーベルがサンディエゴ・コミコンで「今後のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)はフェーズ4という新たな段階に入り、劇場用映画とディズニープラスの両プラットフォームにまたがって展開していく」と発表したのと同じような状況が、今DCにも起こっているというわけですね。だからこの「DCファンドーム」は今後のDCの戦略が見えてくるという意味でも重要でしょう。コロナウイルスのせいで公開が延びてしまっている超大作『ワンダーウーマン 1984』にとっても、仕切り直しのキックオフとして最高の機会です。

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