『竜の道 二つの顔の復讐者』冒頭から衝撃的な幕開けに 玉木宏と高橋一生の絶妙な双子感
『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)は、同世代俳優・玉木宏と高橋一生の初共演作とあって放送前から注目度は高かった。
初回2時間スペシャルの冒頭、激しく壁に顔面を殴打させられ血塗れの高橋一生と、怒りをぶつけて彼の後頭部に銃口を向ける玉木宏。そんな2人の構図から始まり、度肝を抜かれた視聴者も多かったのではないだろうか。
こんなにハードボイルドな2人は初見である。言わずもがな俳優として確かなキャリアを持ち、これまではどちらかと言えば爽やかで器用に立ち回る役どころが多かった2人。そんな彼らが本作では、育ての両親を自殺に追いやった憎き相手キリシマ急便の社長・霧島源平(遠藤憲一)への復讐に燃える双子役を演じる。「両親の敵討ち」という共通の目的のために手を取り合ってきた唯一の肉親の2人がなぜ冒頭のシーンのような結末を辿ってしまうのか。
一卵性双生児で見た目もそっくりだった竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)だが、竜一は22歳のときに焼死を装って他人の戸籍を奪い、整形をして全くの別人に生まれ変わる。裏社会と関わりを持ち、霧島への復讐を誓う。一方、竜二は配送業者を管轄する国土交通省のエリート官僚として霧島のスキャンダルを暴こうとする。2人には血の繋がらない妹の美佐(松本穂香)がいるが、竜一の秘密については知らず、死んだものだと思っている。
共通目的に燃える2人の歯車がどこで狂い出すのか。竜二が一線を超えずにこちら側の世界に踏みとどまれているのは、美佐の存在が大きいのかもしれない。両親から託された大切な存在で、竜一は「血が繋がらない妹で、すぐに彼氏でもできてそいつが守ってくれる」と一蹴するも、竜二にとっては守るべき存在で自分が決定的なヘマをできないという大きなストッパーになっているようだ(竜一の実際の思いは言葉とは裏腹で妹のことを今もとても大切に想っていることが、ストーリーが進むにつれてわかってくる)。
早くも1話目にして、玉木宏は1人3役を演じ分けて見せた。竜二の前で見せる心優しい兄・竜一の顔と、戸籍を変え整形をして手に入れた裏社会に片足を突っ込んだ斎藤一成、そこからさらなる資金と海外への逃避行を経て成り上がったITコンサル会社の社長・和田猛。泥水をすすって屈辱を受けながら生まれ変わる度に、竜一はどんどん甘さと同時に人間味を捨てて心までかなぐり捨てていく。「汚い仕事は全部自分が引き受ける。竜二は表の世界で堂々と生きていろ。竜二と美佐が幸せならそれでいい」と全てを自分1人の肩に背負って意気込むほどに、どんどん引き返せなくなりどこかで竜二ともすれ違い、孤立を深めていくのだ。1人目の斎藤一成になったときの経緯や、そこで犯した罪については竜二に告白でき「その罪も受け止める」と言われた竜一。しかし、和田猛に生まれ変わったいきさつについては竜二に打ち明けられず、その幻覚に苦しむ様子が描かれていた。この事件がまず第一の彼らのすれ違いを生む一件になっているのは間違いなさそうだ。