瀬戸康史の絶大な安心感 『私の家政夫ナギサさん』田所優太はこれ以上ないハマり役に

 さて、ここまでの役どころと毛色が違うのが『海月姫』(フジテレビ系)で見せた女装姿だ。東村アキコの人気コミックが原作だが、漫画内でのみ成立するかと思えた美しい女装男子・蔵之介という存在をそのまま、というより期待以上のクオリティーで現実でも全くの違和感なしに体現して見せてくれた。大物政治家の息子ながら、人の目や他人の意見に左右されず自身の信念を持って進む力強さを、柔和な見た目の中に矛盾なく共存させられたのは、瀬戸が持つ演技の幅広さゆえのことだろう。同じく“大物政治家の息子”ながらそれを感じさせず奔放に生きている役どころとして『デジタル・タトゥー』(NHK総合)での人気ユーチューバー・タイガ役が挙げられる。静かに反骨心を内包させながら、どちらが表面でどちらが裏面かなんて意識させずにそのどちらもを地続きに見せてくれるのだから、彼は現実離れしたような役柄であっても決して嘘臭くないのだ。

 「犬っぽい」「愛され犬系男子」と評されることがある瀬戸だが、そこから連想されるのは『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)で主人公の女医(中谷美紀)を翻弄する年下のデリバリー屋役。当時この年下男子のアプローチに「可愛い」という声が多数挙がっていたが、瀬戸は「可愛い系男子」が上手く歳を重ね、それだけに終わらなかった、ある意味稀有な成功例とも言えるだろう。彼が持つ「人懐っこさ」「可愛さ」というのが異性のみならず、老若男女に対して向けられるものだというところは大きいように思われる。同性人気の高さを見せつけたのは連続テレビ小説『まんぷく』(NHK総合)での神部役。少し抜けている部分もあるが実直で責任感も強く、萬平(長谷川博己)が興した会社で従業員をまとめるリーダーとして奮闘する。また、男性ばかりが集う暑苦しくなりがちなシーンにあっても画面に彼がフレームインすることで華になるのはもちろんのこと、一気に求心力も増す貴重な存在感を発揮していた。

 これから『私の家政夫ナギサさん』でもメイにとって仕事、恋愛双方の面でどんな嵐をもたらしてくれるのか。メイの仕事以外のダメっぷりを知ったときにどんな反応をするのか。田所自身にもできないことはあるのか、少しの綻びを見せてほしい気もしながら楽しみに見守りたい。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■番組概要
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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