『神様になった日』は原点回帰作に? 『Angel Beats!』から始まったKey×P.A.WORKSの歩み

 そして『Angel Beats!』から始まったKeyとP.A.WORKSタッグは、5年後の『Charlotte』で再び邂逅することになる。スタッフには麻枝准やNa-Ga、浅井義之、東地和生など『Angel Beats!』のスタッフが集結した。体裁としては完結しているものの、登場人物が多数存在するため結果的にメディアミックスが前提となっている『Angel Beats!』だったが、本作では登場人物は絞られており、アニメに適したシナリオ作りがなされた。

 本作は主人公の乙坂有宇が特殊能力を持っており、最終的には過酷な運命を背負っていく「主人公」に重きを置いているように主人公の「成長譚」という側面を色濃くしてる。このようにシナリオに加えキャラクターデザインに至るまで『Angel Beats!』とは異なるアプローチがなされており、その意味で麻枝准の作品としては異質な作品となった。一方で、前作から引き継いだ点としては、音楽がある。共通点として主題歌をLiaと多田葵が担当していたり、ZHIEND、How-Low-Helloといった架空のバンドが登場したりと、前作の要素を受け継いでいる点も随所に感じられる。これらのバンドはCDリリースもされており、オリコンランキング入りも果たすなど、前作同様高い評価を受けたことでも話題となった。

 「『Angel Beats!』では実現できなかった麻枝がやりたかったことができるとの思いから実現に至った」とプロデューサーの鳥羽洋典が話しているように(引用:『電撃オンライン』“Charlotte & Angel Beats! presents スタッフトークイベント in 大阪”ニコ生まとめリポート)、『Angel Beats!』とは様々な面で異なる手法が取られ、両者にとって挑戦的な意味合いを持ったのが『Charlotte』だった。

 そして『Angel Beats!』から10年、『Charlotte』から5年の時を経て、新作アニメ『神様になった日』で再び手を組むことが決定。スタッフ陣は前作からの据え置きとなっており、メインヒロインには前作のヒロイン・友利奈緒役の佐倉綾音が務めることが発表された。本作の企画にあたり、麻枝は「ゲームクリエイターがアニメに挑戦し続ける理由」と題して、key設立から20年の思いや本作にかける意気込みを表明している。プロデューサーの鳥羽から「原点回帰」というキーワードを頂いたとあるように、本作におけるテーマはまさに原点回帰。KeyとP.A.WORKSが世に送り出してきた2作は、ある意味でkeyらしくもあり、ある意味ではkeyらしくない、チャレンジングな要素を盛り込み、両者にとっても意欲的な試みをしてきた。2作品ともに成功と言える成果を収めたわけだが、ここにきてkeyの挑戦を後押ししてきたP.A.WORKSから「原点回帰」というテーマが投げかけられたというのは実に興味深い。10年越しにKeyとP.A.WORKSが贈る会心の原点回帰作。いちファンとしても期待せずにはいられない。

■川崎龍也
音楽を中心に幅広く執筆しているフリーライター。YouTubeを観ることが日課です。Twitter:@ryuya_s04

■放送情報
『Angel Beats!』(再放送)
TOKYO MX、群馬テレビ、とちぎテレビ、BS11にて、毎週水曜24:30~放送
MBSにて、毎週土曜27:08~放送
公式サイト:https://www.angelbeats.jp/onair/

『神様になった日』
10月放送開始
原作・脚本:麻枝准(VISUAL ARTS/Key)
キャラクター原案:Na-Ga(VISUAL ARTS/Key)
監督:浅井義之
出演:佐倉綾音
アニメーション制作:P.A.WORKS
(c)VISUAL ARTS / Key / 「神様になった日」Project

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