『エール』の魅力は多種多様なキャストの妙演にあり!? 朝ドラ近作の傾向から探る

 まもなく『エール』(NHK総合)が折り返し地点を迎える。先週放送の第11週「家族のうた」では、裕一(窪田正孝)が音(二階堂ふみ)と愛娘の華と共に2年ぶりに福島に凱旋し、懐かしい顔ぶれとの再会を喜んだ。長らく裕一の心にあった生家の古山家や、養子縁組を撥ねつけ飛び出した権藤家へのわだかまりが解け安堵する裕一だったが、最愛の父・三郎(唐沢寿明)が他界してしまうのだった。

 悲喜こもごも、様々な人間模様が交錯する第11週だったが、裕一が作曲した校歌を歌う子どもたちの声が響く中、恩師・藤堂先生(森山直太朗)に恩返しができたことをしみじみ噛み締める裕一の表情が印象的だった。その後、古山家で催された宴会では懐かしの川俣銀行の面々……落合(相島一之)、鈴木(松尾諭)、松坂(望月歩)との会話に花が咲き、蓄音機から流れる裕一のヒット曲「船頭可愛いや」に“福島オールキャスト”が耳を傾けるシーンは、折り返しを前にした「福島編」の集大成といった感があった。こうした沢山の登場人物が画面を彩るシーンは『エール』の魅力のひとつだ。物語が戦争編へ突入する直前にスピンオフが展開する12週では、音の父・安隆(光石研)があの世で出会う閻魔様役の橋本じゅん、喫茶・バンブーの保(野間口徹)にコーヒーのいろはを教えた神田のマスター・木下役の井上順、環(柴咲コウ)の恋人・嗣人役の金子ノブアキなど、新たなキャストの参入でまたもや賑やかになりそうだ。

 現在、朝ドラはNHK東京放送局と大阪放送局が半年ごとに交代で制作しているが、こうした「キャストの多さ」は近年の東京制作朝ドラの持ち味のひとつと言える。少人数の会話と心理にグッとフォーカスしてじっくり台詞を聞かせるシーンの多い大阪制作の朝ドラに対し、東京制作の朝ドラはくるくると変わる場面転換とキャストの入れ替わりで見せる楽しさがある。もちろん、どちらが良くてどちらが悪いということではない。それぞれの作劇のカラーと、それぞれの視聴者ニーズがあるという話である。

 試しに直近4作の朝ドラ、『まんぷく』(2018年・大阪制作)、『なつぞら』(2019年・東京制作)、『スカーレット』(2019年・大阪制作)、『エール』(2020年・東京制作)の12週までのレギュラーキャストとゲストキャストを数えてみた。キャストのカテゴライズについて、本稿では「3週以上にわたり出演すること」「子役は数に入れず本役のみをカウント」という条件をもってレギュラーキャストの定義とし、「フルネームの役名がある」もしくは「クレジットの際、並びでない単独表記」をゲストキャストの定義とした。

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