「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ルース・エドガー』
ルースを演じたケルヴィン・ハリソン・Jr.は近年注目の俳優です。A24製作の『イット・カムズ・アット・ナイト』で名前を知った方も多いのではないのでしょうか。今作では、一見完璧な優等生でありながら、腹の底が見えない不気味さを見事体現しています。監督のジュリアス・オナーがインタビューで明かしたところによると、彼の音楽的なリズム感が不気味さを演出する上で、非常に効果的に働いているとのことです(参考:ジュリアス・オナー監督が語る、『ルース・エドガー』の普遍性とキャスティングに込めた思い)。新たな公開日が7月10日に決まった『WAVES/ウェイブス』では主演を務めており、こちらも楽しみです。
ルースが優等生であり続けなければならないのは、黒人は一度失敗をすると、それを挽回するチャンスが得られなくなるという問題に起因します。人種差別はいけないとされる世の中においても、マイノリティに生きる人々はこのような崖っぷちに常に立たされながら、自身の生き方を規定されているのです。そしてその規定をしているのは、マジョリティが形成してきた社会秩序とそこに生きる人々です。この問題は、アメリカの人種差別問題だけでなく、日本でもアイデンティティを考える上でこれからますます重要になってくると思います。
差別、偏見がいけないというのは、当たり前のように広く共有されています。本作は“その先”を考える上での一助となる作品です。また、こうした複雑な問題を描く社会派の作品でありながらも、サスペンスとしてのエンターテインメント性を失っていないのも魅力的なところ。自粛明けの映画初めにぴったりな一本です。
■公開情報
『ルース・エドガー』
ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中
監督・製作・共同脚本:ジュリアス・オナー
出演:ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、ティム・ロス
提供:キノフィルムズ
配給:キノフィルムズ/東京テアトル
2019年/アメリカ/英語/カラー/SCOPE/5.1ch/110分/原題:Luce/字幕翻訳:チオキ真理/PG-12
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