興行会社ティ・ジョイに聞く、コロナ以降のシネコン運営 映画館の意義を模索する時代がやってくる

 コロナ禍における映画業界の現状、そしてこれからについて考えるリアルサウンド映画部の特集企画『「コロナ以降」のカルチャー 現在地から見据える映画の未来』。第4回は新宿バルト9をはじめ国内21劇場を運営(共同経営含む)する株式会社ティ・ジョイから法務チーム長の田代天馬氏、法務チームの柴﨑立哉氏、総務チームの田村順也氏にインタビュー。シネマコンプレックスとして、多くの観客に映画を届ける彼らは、今回のコロナ禍をどのように見ているのか。その影響や今後の映画館運営、コロナ以降の映画館のあり方について話を聞いた。(編集部)

ついに営業が再開する映画館

ーー私もシネコンでアルバイトをしていたのですが、映画館は大雪の日も台風の日も営業を続けていて、本当の意味で年中無休なんだと思っていた節があります。今回の新型コロナウイルスの影響で映画館が続々と休館しているのがある意味信じられないというか、一種の神話が崩壊したような感覚があります。

田代天馬(以下、田代):ここまでの大規模で休館するのは弊社としても初めての経験です。2016年の熊本地震や2018年の西日本豪雨被害の際に、被害にあった劇場を安全点検のため一時休館するといったことはこれまでもありましたが、目に見えないウイルスで建物に影響が起きていない状況で、これだけ大規模で休館を判断するのは今回が初めてでした。

田村順也(以下、田村):一旦シネコンを無視して考えると、日本の映画館文化は本当に神話のようで、1945年の8月16日にも上映が行われていました。第二次世界大戦終戦の翌日には映画が観られる状態になっていたというのが日本の映画館文化なんです。おっしゃったように神話が崩れたというのは、ここ数年のことではなく、映画史に残るほどの大きな出来事でした。

ーー緊急事態宣言も解除され、営業を再開する上での道のりをお聞かせください。

田代:鹿児島にあります鹿児島ミッテ10はすでに営業を再開しています。そのほかの弊社運営劇場は6月1日をめどに再開の予定を立てているところです。やはり営業をする上で、お客様に安心安全をお届けしなくてはなりません。

ーー安全性の確保という面ではどのような施策を考えていらっしゃいますか?

田代:業界団体である全国興行生活衛生同業組合連合会から再開にあたってのガイドラインがでましたので、基本的には、当該ガイドラインに則った施策を行う予定です。例えば、四方一席ずつ空けた座席販売、従業員・お客様の体温測定、消毒、従業員のマスク着用徹底等です。その中でも、例えばお客様にマスク着用を義務付けるのかといった個々の問題もあるので、その辺りのオペレーションも固めていかなければなりません。また、デートで来ても一席空けなければいけないとか、子どもを連れてきても一席あけなければいけないとなると、その隣に座っている方が気になるといった防犯面でも気がかりですよね。施設側で用意できるものとお客様にお願いするものをどこで線を引くのかなど、そういったことを踏まえて、ソーシャルディスタンスの取り方をどうしていこうかと考えることは山積みです。また、当該ガイドライン以外のところでは、映画館初で、「映画館まるごと抗菌・抗ウィルスコーティング」を行いました。病院施設等でも採用されている触媒抗菌システムです。お客様には多くの安心安全をお届けできると思います。基本的には、「どこまでやれば安全か」という客観的な数値的指標がない中で、やれる対策はしっかりと行い、「これだけやっているなら観に行っても大丈夫かな」とお客様に思っていただけるような環境づくりを目指していきます。

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