朝ドラ名物“喫茶店夫婦”は主人公たちの“拠り所”に!?   『エール』野間口徹×仲里依紗から考察

 人々の心に寄り添う曲を生み出す作曲家・古山裕一(窪田正孝)とその妻・音(二階堂ふみ)の物語を描く、NHKの連続テレビ小説『エール』。上京し新婚生活を送る二人の良き相談相手となっているのが、喫茶「バンブー」の梶取夫妻だ。

 喫茶店×夫婦という組み合わせは、朝ドラの昔からある定番キャラクターだ。たとえば『おひさま』に登場する飴屋(今でいう甘味喫茶)の夫婦や、『私の青空』の喫茶「巌流軒」の夫婦、『あぐり』の「カフェ・セラヴィ」の夫婦など。朝ドラに登場する喫茶店は主人公たちの“拠り所”になり、店主は彼らを“見守る”役割を担う。その役割が夫婦になると、葛藤や悩みを抱える主人公へ与えられる助言は多角的になり、物語の分岐点が広がる。また夫婦の個性的なやりとりはドラマにリズムやアクセントを加える。

 本作では、喫茶店の名物夫婦を野間口徹と仲里依紗が演じるが、近年放送された朝ドラのなかでは、『スカーレット』ではマギーと財前直見が(後半では林遣都と福田麻由子も)、『まんぷく』では加藤雅也と牧瀬里穂がその役割を務めていた。

『まんぷく』パーラー白薔薇のコテコテ関西弁夫婦・アキラとしのぶ

 『まんぷく』で登場するパーラー白薔薇は、かつて俳優志望だった川上アキラ(加藤雅也)と宝塚の道に進んだ経験のあるしのぶ(牧瀬里穂)が営む喫茶店。ここは主人公・福子(安藤サクラ)のアルバイト先であり、萬平(長谷川博己)の友人・世良勝夫(桐谷健太)や塩軍団の面々(この時点では『まんぷく食品株式会社』の社員)が集まる場でもあった。そのため、『まんぷく』後半の展開に関係する舞台となったり、登場人物たちの恋模様を描く舞台になることも。

 時にトラブルの舞台にもなってしまう白薔薇だが、コテコテの関西弁で話す夫婦漫才のような二人によって、その場が過度にシリアスになることはなかった。朝から気分を晴れやかにしてくれるこの夫婦の優しさは、苦境に立たされた福子を癒し、発明家として突っ走る萬平を支える彼女の休憩地点になっていた。

『スカーレット』カフェ「サニー」の穏やか夫婦・忠信と陽子

 『スカーレット』で登場するカフェ「サニー」。もともとは大野忠信(マギー)と陽子(財前直見)が営んでいた雑貨店だったが、カフェへと生まれ変わった。雑貨店の頃から、大野夫妻は主人公・川原喜美子(戸田恵梨香)ら家族を気にかけており、カフェになってからは夫妻の“見守る”役割が強くなる。カフェで繰り広げられる登場人物たちの掛け合いに、穏やかな笑顔を向ける彼らの姿があった。

 また、朗らかで優しい大野夫妻は、川原家のキャラクターを際立たせる。忠信は、戦争中、同部隊の班長だった喜美子の父・常治(北村一輝)に助けられ、恩を感じている。何かと思いやる常治と忠信の関係は、トラブルメーカーな常治の困った人を見捨てられない一面を際立たせた。陽子と喜美子の母・マツ(富田靖子)の関係も同様で、明るい性格の陽子はマツと出会った当初から彼女を気にかける。マツにとって、陽子との会話は、喜美子ら姉妹とは異なる心の支えになっていたに違いない。

 期間限定ではあったが、林演じる大野家の息子・信作と福田演じる川原家の三女・百合子の夫婦も、喫茶店×夫婦の組み合わせを演じていた。信作・百合子夫妻はコミカルに場を回す第21週はスピンオフ回とも呼ばれ、この二人が主軸の週はアクセントとなり、喜美子の息子・武志(伊藤健太郎)に訪れる試練を際立たせることになった。

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