綾野剛×星野源から生まれる熱を、『MIU404』の前に『コウノドリ』で復習

綾野剛×星野源から生まれる熱

 “温”のサクラに対して、一見、“冷”のタイプとして登場するのが、星野が演じた四宮だ。患者や周囲への言葉が直接的で冷たい印象を与えるが、物語が進むにつれ、四宮もまたサクラとは違う向き合い方ではあるものの、赤ちゃんやお母さんの身体を何よりも大切にしていることが見えてくる。アーティストであり、役者でもある星野。役者としての印象を強くしたのは主演を務めた『箱入り息子の恋』(2013年)だろう。大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)は、『コウノドリ』第1期と第2期の間に放送されている。星野は見た目にインパクトがあるタイプではないが、普通さの中に不器用さを滲ませるのが上手い。四宮も不器用な男だが、外側を“冷”で覆った四宮では、これまでとは違った不器用さを表現してみせた。

 メガネというアイテムは、役者の表情を見えづらくする危険性もある。しかし星野は、ふとした目や口の動き、会話の間などで四宮の本当の感情を静かに伝え、四宮のキャラクターを積み上げていく。第1期第9話では、四宮がいつも病室を訪れていた「つぼみちゃん」の容態が急変。同話終盤で四宮がサクラを前に見せる涙に胸が締め付けられた。また第2期では、冷たそうに見えて心の底は温かい四宮のキャラクターが浸透。第1話での「心室中隔欠損」を抱えた胎児に不安を募らせる妊婦(高橋メアリージュン)に、「大丈夫だよ、俺も手伝うから」と声をかけた夫(ナオト・インティライミ)へ「手伝うじゃないだろ、あんたの子供だろ」と一喝して見せた姿に大きな支持が集まった。

 第2期では、チーム・ペルソナの絆がより強く描かれた。最終話では、吉田羊演じる助産師の小松留美子がサクラと四宮を抱きしめ、「私たちは家族なんだ」と宣言し、サクラと四宮が笑顔で応える。先が読めず社会全体を大きな不安が襲っている今、出産という奇跡によってこの世に生を受けた自分自身、父や母、家族、友人、自分とつながりのある人はもちろん、その先にいる人々のことを思い、行動していくことが求められている。

 今回、傑作選として放送される第1期第5話では、「中学生の出産」と「特別養子縁組」について描かれる。まだ幼さのある中学2年生のカップルを山口まゆと望月歩が好演。サクラが自分の育った施設でピアノを弾く、産婦人科医サクラでも天才ピアニト「BABY」でもないサクラとしての表情も印象的だ。誕生の奇跡、命の大切さはもちろんのこと、私たちが生きていくうえで大きな拠り所となる“居場所”や家族、人との繋がりについて描いている『コウノドリ』。新作ドラマの放送延期は残念ではあるが、『コウノドリ』が今、改めて放送されることにはきっと意味がある。その世界観の核となった綾野を中心としたチーム・ペルソナ。中でもサクラと四宮という対照的な柱があったことで、それぞれのエピソードを一義的ではなく考えることができた。演技面でも綾野と星野が、熱すぎない熱量でぶつかり合い、互いを支えていた。

 『MIU404』ではW主演としてバディを組むふたり。警察内部で“何でも屋”と揶揄される、初動捜査のプロフェッショナルである「機動捜査隊」(通称:機捜)が、24時間というタイムリミットの中で事件解決を目指す1話完結のノンストップ「機捜」エンターテインメントだ。本作で機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく、刑事の常識にも欠ける“野生のバカ”伊吹藍を演じる綾野と、常に先回り思考で道理を見極める、観察眼と社交力に長けているものの、自分も他人も信用しない理性的な刑事・志摩一未を演じる星野。『コウノドリ』とは全く違った熱量と関係性で、凸凹バディを見せ、楽しませてくれるに違いない。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
『コウノドリ傑作選』
TBS系にて、4月10日(金)22:00〜22:54放送(話数未定)
出演:綾野剛、松岡茉優、吉田羊、坂口健太郎、星野源、大森南朋ほか
プロデューサー:峠田浩、那須田淳
演出:土井裕泰、金子文紀、山本剛義、韓哲、加藤尚樹
製作著作:TBS
(c)TBS

金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、近日放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる