林遣都×大島優子、『スカーレット』の世界観を支える演技力 “主役”の2人が親友役を演じる贅沢さ

 朝ドラ『スカーレット』の放送もいよいよあと1カ月となった。幼い頃、大阪から信楽に移住し、陶芸に目覚めたヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)が、自分の心の思うままに表現する喜びを発見していく過程が描かれ、そのため何を選択するのか、愛か、孤独か……と苦悩の末、別れた夫・八郎(松下洸平)と女手ひとつで育てた息子・武志(伊藤健太郎)とわだかまりをとっぱらって新しい関係を築くことになったところまでが20週。翌、第21週は、一旦、喜美子の物語は小休止、特別編になった。

 21週のサブタイトルは「スペシャル・サニーデイ」(脚本は三谷昌登)。喜美子の妹・百合子(福田麻由子)と喜美子の幼なじみの信作(林遣都)夫婦を中心にした、これまでの回想も交えたコメディ仕立ての内容である。

 有馬温泉に日帰りで出かけていった父・忠信(マギー)と母・陽子(財前直見)の代わりに店番をする信作と百合子のもとに、喜美子の幼なじみ・照子(大島優子)の夫・敏春(本田大輔)がやって来てひと悶着。今度は百合子の昔の知り合いがやって来て、信作がやきもき……。その流れに主人公の喜美子は出てこない。あくまで信作や百合子、照子がメインの週だ。こういう内容は本編が終了した後、しばらくして放送されるスピンオフドラマによくあるが、本編の枠でやることは珍しい。けれど、そもそも林遣都や大島優子は主演作品も多くもつ華も実力もある俳優で、『スカーレット』でも要所要所かなり引き締めて来た。そんな林と大島だからこそ、スピンオフ枠でなく本編枠でやる意味があるともいえるだろう。

 思えば、主人公の幼なじみ役をこれだけの大物が演じることも珍しい。たいていは朝ドラをきっかけに飛び立っていくことを期待されたフレッシュな俳優か、若いなりに実力あるバイプレーヤーがやるものとされている。例えば、広瀬すず主演の『なつぞら』では幼なじみは山田裕貴、福地桃子、富田望生、安藤サクラ主演の『まんぷく』では松井玲奈、呉城久美、永野芽郁主演の『半分、青い。』は矢本悠馬、奈緒。有村架純主演の『ひよっこ』では佐久間由衣、泉澤祐希などが務めてきた。

 戸田恵梨香が新人枠ではなく、フレッシュ俳優がやると実力も年齢差も歴然としてしまうため、彼女と拮抗する俳優としての林遣都と大島優子だったのだろう。そして、ふたりがたくさんのファンもいる実力派だったため、出演が発表されたとき、私は彼らの出番が多いものと勝手に思い込んでしまった。ところが第1週の子役期間を経て、2週目に登場するも、3週目から喜美子が大阪に行き、2人の登場シーンはほとんどなくなる。

 幸い、大阪編は予想以上に短く、6週目から喜美子が信楽に戻って来て照子の実家・丸熊陶業で働くことになった。とはいえ、喜美子も照子も信作も成人して各々の道を歩むため、林遣都と大島優子はやっぱりたまにしか出てこないのであった。残念。とはいえ、2人はわずかな出番で視聴者の心をしっかり掴んでいる。例えば、名優は全2幕の舞台の1幕には出ず、2幕にちょっとだけ印象的な場面に出て盛り上げるということもあり、あたかもそういう役回りのごとく、時々、印象的な場面に出てきて、喜美子を支え続けた。

 林遣都と大島優子は、芝居の方向性は違うと感じるが、短い出番で確実に世界観を作り上げ、視る者に伝えたいことを十分過ぎるほど伝えることにおいては同じくらいの力を発揮している。

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