『トップナイフ』桜田ひよりが引き出す天海祐希の笑顔 「誰が辞めるのか」 問題にも進展が?

 人間だれしも、顔や言動などを見ただけではその人のすべてを知ることはできない。人は多面的な性格や表情を持っているからこそ複雑で、それが一人ひとりの愛らしさにもつながっている。『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)第7話は、そのような「人間がもつ複数の顔」についての物語である。「顔の認識がつかなくなってしまった」という患者と深山(天海祐希)の娘・真実(桜田ひより)の目を通して描かれたのは、“孤高の人”深山瑤子が隠してきた「もう一つの顔」だった。

 天才脳外科医として、はたまた医局のクセモノ医者たちをまとめ上げるリーダーとして、深山は常に「強く何にも動じない姿」を見せ続けてきた。それは家庭のなかでも変わらなかったようで、実の娘にさえも決して弱音を吐く姿を見せることはない。そんな深山は、冷めていて何にも心を動かされない人間なのか、というと決してそうではないはずだ。母親としてのまっとうな愛情を娘に向けたり、患者の心に寄り添うことに徹したり。そのどこまでも“人間的な姿”が、彼女が“トップナイフ”たる所以でもある。

 しかし娘の真実には、その多面的な表情を見る機会がなかった。家庭より仕事を優先することが多かった母親は、そのぶん「見えない顔」で満たされていて、それが不安を掻き立てていたのかもしれない。

 母親が普段どんな風に仕事をしているのか。気になった真実はこっそり病院に足を運び、そこで、深山が仕事に向ける真剣な表情と、多勢の患者を救いつづけてきた偉大さを垣間見ることになる。

 第7話のラストで、真実が仕事帰りの深山をねぎらい、健気に食事を振る舞う場面があった。職場では強くあらないといけないなら、せめて家族には弱い姿を見せて甘えてほしい。そんな真実の心情が読み取れるシーンであり、一度は離れてしまったこの母と娘が再び関係を取り戻そうとする瞬間が紡がれていたように思う。桜田ひよりのはじける笑顔によって、凛とした天海祐希の顔が綻ぶ。その一瞬に、不器用ながらも決して手を離さない母娘の美しさが充満していた。

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