女子高生の「日常系」がアニメに続きドラマでも流行? 『ゆるキャン△』『女子無駄』から考察

アニメ/ドラマの「日常系」流行の理由

 ところで、アニメの「日常系」のハシリは『あずまんが大王』と言われるが、なぜ近年こんなにも流行っているかについては、『攻殻機動隊S.A.C』『東のエデン』シリーズなどの神山健司監督が「シネマトゥデイ」のインタビュー(2017年)でこう語っている。

「(観客は)自分たちからあまり距離があるような作品を観たくないんじゃないのかなと思う」
「アニメーションの視聴者層が広がって、若い世代で、以前はアニメーションを見なかった人たちも普通に見るようになってきた。震災以降、世代交代というかアニメーションを観ている人を含め、日本全体の経済の中心にいる世代が動いたような気がした」
「自分もそうだが、今はあまり重い作品、深刻なストーリーを観たくないという感覚がある」

 一方、深夜ドラマは、ゴールデン&プライム枠に比べて視聴率にあまり縛られないことから、クリエイターたちがそれぞれの個性を存分に発揮し、実験的な作品や遊び心ある作品を多数手掛けてきた。と同時に、視聴者たちに求められるのは、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)や『深夜食堂』(TBS系)をはじめとした「飯テロ」系や、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)のような低予算を最大限に生かしたパロディ満載の脱力系、『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)や『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)などの可愛い“おっさん”たちを愛でる作品など。

 それぞれジャンルは異なるものの、根本の部分で共通しているのは、「寝る前の時間に、重苦しい気持ちになる作品ではなく、頭をからっぽにして笑える、癒される、『美味しそう・キレイ・可愛い』など、五感が刺激される作品に触れたい」という思いだろう。

 実はこうした理由こそ、アニメの「日常系」が流行してきた理由と同じである。そして、ドラマの世界がこれまで潜在的にあった需要=日常系に気づいたことが、今回の『女子無駄』『ゆるキャン△』の放送につながったのではないだろうか。

 思えば昨年、大いに話題になったドラマ『俺の話は長い』(日本テレビ系)も、古典的なホームドラマの香りを漂わせつつ、アニメ的スピード感を持つ「日常系」だった。そう思うと、漫画原作の実写ドラマばかりになった今、深夜ドラマにアニメの一大ジャンル「女子の日常系」が取り入れられるのはむしろ遅いくらいで、今後ドラマにおいてもますます増えていくのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
木ドラ25『ゆるキャン△』
テレビ東京ほかにて、毎週木曜深夜1:00~1:30放送
BSテレ東にて、毎週火曜深夜0:00~0:30放送
Amazon Prime Videoにて、各話地上波放送翌日毎週金曜10:00~配信
出演:福原遥、大原優乃、田辺桃子、箭内夢菜、志田彩良、柳ゆり菜、土村芳
原作:『ゆるキャン△』あfろ(芳文社)
脚本:北川亜矢子
監督:二宮崇、吉野主、玉澤恭平
音楽:小田切大
主題歌:LONGMAN「Replay」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
プロデューサー:藤野慎也(テレビ東京)、熊谷喜一(ヘッドクォーター)、岩倉達哉(SDP)
制作:テレビ東京/SDP/ヘッドクォーター
製作著作:ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会
(c)ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会 (c)あfろ/芳文社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/yurucamp/
公式Twitter:@yurucamp_drama
公式Instagram:@yurucamp_drama

■放送情報
金曜ナイトドラマ『女子高生の無駄づかい』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送(一部地域で放送時間が異なる)
出演:岡田結実、恒松祐里、中村ゆりか、福地桃子、浅川梨奈、畑芽育、井本彩花、横山涼、内藤理沙、町田啓太、大倉孝二
原作:ビーノ『女子高生の無駄づかい』(角川コミックス・エース刊)
脚本:田辺茂範(劇団 ロリータ男爵)、矢島弘一(劇団 東京マハロ)、角田貴志(劇団 ヨーロッパ企画)、山田由梨(劇団 贅沢貧乏)、安藤奎(劇団 アンパサンド)、玉田真也(劇団 玉田企画)
監督:山本大輔、日暮謙、中島良、洞功二ほか
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)、布施等(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日

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