『キャッツ』は単なる失敗作でない!? カルト化する可能性を秘めた“異形の映画”

 本作は確かにミュージカルとしては失敗作だ。しかし、映画としては失敗作とも言い切れない。ダンスの魅力が消えているのは致命的だが、奇妙な猫人間たちは他の映画ではあまりお目にかかれない感触をもたらしてくれる。このビジュアルが世に出たのは事故なのか、あるいは故意なのかは不明だ。止めるタイミングは何度もあったはずだし、実際、公開後の評判を受けて修正もかかっている。しかし、少なくとも「これでイケる!」という合意があって、撮影が進んでいたはずだ。ハリウッドの映画制作は複雑怪奇で、魑魅魍魎が跋扈する魔境でもある。監督が全権を握っているわけではない。特殊効果の担当者はもちろん、プロデューサーや出資者、舞台版の関係者の意見もあっただろう。しかし、ともかく「これでイケる!」と判断し、その決定を曲げなかった人間がいたのだ。その人間(もしくは集団)のこだわりは、必ず誰かの心に響くだろう。 

 そういえば初期の本国レビューで「見たことのないジャンルのポルノを見たような気持ちだ」的な意見があった。この評価は、ある意味で成功だと言っていい。たとえば『アバター』(2009年)の青い宇宙人ナヴィだって、公開当時そのビジュアルは決して絶賛はされていなかった。しかし現在、主に海外ではナヴィのコスプレやファンアートをよく目にする。私は本作でも同様の現象が起きるのではないかと思う。観たことのない映像というのは、強烈な印象を観客に残すからだ。ただ『キャッツ』の場合は『アバター』と違って、映画の中身に問題があるので、もっと時間がかかるかもしれないが……。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿し
ています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『キャッツ』
全国公開中
監督:トム・フーパー
脚本:リー・ホール、トム・フーパー
製作総指揮:アンドリュー・ロイド=ウェバー、スティーヴン・スピルバーグ、アンジェラ・モリソン、ジョー・バーン
原作・原案:T・S・エリオット、アンドリュー・ロイド=ウェバー
出演:ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、ジェイソン・デルーロ、イドリス・エルバ、ジェニファー・ハドソン、イアン・マッケラン、テイラー・スウィフト、レベル・ウィルソン、フランチェスカ・ヘイワードほか
配給:東宝東和
(c)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://cats-movie.jp/
公式Twitter:@catsmovie_jp

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