明智光秀を“麒麟”に見立てる本意は? 王道に見せかけた『麒麟がくる』に仕掛けられた謎
最終回を迎えた『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)の熱狂が醒めない昨今だが、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合)も、じわじわと盛り上がりはじめている。
中でも目を引くのが、キービジュアルとして提示される各登場人物のポスターだ。主人公の明智光秀を演じる長谷川博己を筆頭に、織田信長を演じる染谷将太、斎藤道三を演じる本木雅弘、足利義輝を演じる向井理、松永久秀を演じる吉田鋼太郎等のポスターは光と影のコントラストが強く、それぞれのイメージカラーを強調したもので、まるでゲームのキャラクターのよう。そのままソシャゲ(ソーシャルゲーム)のイラストに使えそうな仕上がりで、全種類コンプリートしたくなる。さながら「インスタ映えする戦国武将」とでも言いたくなるキラキラ感だが、SNS時代に注目を集めるための第一の矢として、うまくハマっていると感じた。
とは言え、大河ドラマの肝はやはり脚本。どんなにビジュアルや出演俳優が豪華でも、肝心の物語がつまらなければ人はついてこない。
近年の大河ドラマは2016年に三谷幸喜が脚本を執筆した『真田丸』以降、森下佳子の『おんな城主 直虎』、中園ミホの『西郷どん』、そして宮藤官九郎の『いだてん』と、朝ドラで成功した脚本家3人が執筆するという新しいアプローチが続いていたが、今回、脚本を担当するのは池端俊策。
70年代から活躍するベテラン脚本家で、近年はNHKで『形成済民の男』や『夏目漱石の妻』といった骨太のドラマを手掛けている。そんな池端が、戦国時代を舞台に明智光秀を主人公にした大河ドラマを手掛けると知った時は“随分、王道に寄せてきたな”という印象だった。
今年の『いだてん』がオリンピックを題材に近現代を描くという、大河ドラマとしては異色作だったため、『いだてん』で離脱した昔からの大河ドラマ視聴者を取り戻すために、軌道修正したという見方もできなくはない。
だが、守りに入った企画かというと、そうとも言い切れない。それは主人公が明智光秀だからだ。織田信長に反旗を翻し本能寺の変を起こした後、羽柴秀吉に破れて三日天下と言われた明智光秀は、信長、秀吉、あるいは徳川家康とくらべると、悪役であり敗者で、あまり主役として描かれてこなかった戦国武将ではないかと思う。